その個人情報って本当に個人情報?
さて、この個人情報という言葉、皆さんにもなじみのある言葉になってきているのではないだろうか。少し確認をしておくと、ここで取り扱う「個人情報」とはいわゆる個人情報保護法に言う個人情報のことである。もちろん、法律上の用語なので定義が存在する。
現行の個人情報保護法は2003年に成立した。この前後では、個人情報保護法について、社会的に大きな議論が巻き起こった。あるところでは「治安維持法以上の悪法」と言われたり、いわゆる「過剰反応問題」が起こったりもした。
しかし、成立から10年以上たった今日、個人情報保護法にはある種の期待のようなものが一般的には寄せられているのではないかと個人的には考えている。例えば、大学などで講義をしていると、「さまざまな情報の利活用が社会的に進んでいるが個人情報保護法があるから自分の情報は保護されて安心だ」というような趣旨のレポートをよく見るし、あるいは、SNSでは自らの情報が勝手にSNS上で使われることに対して「個人情報保護法に基づいて訴えてやる」というような発言を見ることがある。
他方で、ビジネスにおける情報の利活用において、「個人情報」の考え方に違和感を覚えることがある。個人情報保護法が、自らの個人情報を守ってくれるという認識が広まる一方で、以下のような大きく分けて3つの誤解が生じているのではないかと考えている。
①個人情報保護法は自分が「個人情報」だと思った情報を保護してくれる
②個人情報保護法に基づいて「個人情報」の保護を自らが訴えることができる
③「個人情報」とは氏名・住所・生年月日・性別のことを指す
今回はこれらの3つの誤解が生じた原因を考えることを中心に進めたい。①、②については情報に関するプライバシーとの違いの視点から、考えてみたい。実は、①、②のような誤解は、プライバシーと個人情報のそれぞれの性質を混同しているからこそ起こる誤解だといえる。情報のプライバシーと個人情報の違いについて知ってもらうことで、この誤解を解いていきたい。③については個人情報保護法の歴史的経緯を踏まえつつ、考えていきたい。個人情報保護法が成立した経緯、どういう情報をなぜ保護する必要が出てきたのか知ってもらうことで、誤解を解いていく。