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シンクライアントはデスクトップの仮想化を実現するか

  2010/09/22 10:30

クラウドクライアントコンピューティングがクラウド化と仮想化の波のなかで注目されるようになってきた。サーバー側で仮想デスクトップを用意し、デスクトップにはシンクライアントを接続するだけというコンピューティング環境である。シンクライアント大手のWyse Technology社でマーケティングと戦略最高責任者を務めるジェフ・マクノート氏にインタビューする機会を得たので、その特色と用途についてレポートする。
 

マルチメディアも扱える

 Wyse Technology社は、Citrix XenApp, Citrix XenDesktop、Microsoft Terminal Service、およびVMware View Virtual Desktop の環境で動作するシンクラアントソリューションを提案している。

それを特徴的に構成するのは、シンクライアントハードウェア、Wyse Thin OS(WTOS)とWyse TCX Suiteというソフトウェアだ。 シンクライアントハードウェアは、PS/2、USB、ネットワーク、DVI-Iコネクタなどのインターフェースを持つ小型端末であり、WTOSはシンクライアントが必要とする機能のみを提供する非常にコンパクトなOS。また、Wyse TCX(Thin Client Extention)Suiteは、マルチメディア、マルチディスプレイ、USB機器、音声、Flashなどの機能を提供するソフトウェア群だ。

ジェフ・マクノート氏
手にはシンクラアント、胸には「No PC」

かつてのシンクライアントはソフトの互換性に問題

シンクライアントは、90年代後半のオラクルがネットワークコンピュータ(NC)を提唱して以来長い歴史を持っているが、大きな成功を収めてこなかった。かつてのシンクライアントが成功を収められなかった理由として、マクノート氏は「サーバー側の問題でアプリケーションの互換性がうまくいかなかった」ことをあげる。

現在は仮想デスクトップ(VDI:Virtual Desktop Infrastructure)の登場により、シンクライアントをとりまく状況はまったく異なり、「ほとんどすべてのアプリケーションが動作するようになり、USB機器やマルチディスプレイ、音声も使えるようになっている。VDIとクラウドが結びついてチャンスが広がっている」とみている。

WTOSシンクライアントソリューションの特色は次のようにまとめられるだろう。

・高速な起動:約10秒で起動する。

・セキュリティ対策が不要:WindowsやLinuxと違ってウィルスなど攻撃を心配しなくていい。データ保護もクライアントにデータを置かないから問題ない。

・クライアントの管理が必要ない:管理はサーバー側で行い、クライアントの故障リスクも非常に低い。

・消費電力が少ない:PCのシステムと比べて10分の1程度で済む。

 PCである必要はない用途はたくさんある

では、実際にシンクライアントはどのような場面で使われているのだろうか。マクノート氏は大きく分けて4つの用途があるという。

1つ目はヘルスケア、「この分野ではWyseがナンバーワンの位置にいます。米国にはHIPPAというレギュレーションがあり、個人情報などを端末に置いてはいけないことになっています」という。HIPPA(Health Insurance Portability and Accountability Act)とは、「医療保険の携行と責任に関する法律」と訳され、医療情報の電子化に関連したプライバシー保護やセキュリティ確保について定めた法律であり2003年に施行された。病院等ではHIPPAに沿った情報保護が実施されており、シンクライアントはそれに適したソリューションであることになる。

2つ目は教育関連であり、教室におけるコンピュータ使用で集中管理できるシンクライアントの特質が活かされているという。3つ目はファイナンスであり、ローカルにデータを置かないなど、セキュリティが重視されるシステムに適しているということになる。

最後に4つ目として店舗でのクレジットカード管理などに利用されるというをあげてくれた。米国で最大の顧客は1万台のシンクライアントを導入しているが、本社で集中的に利用する一方で、全米の店舗展開をしている例があるという。

変化するコンピューティング

日本でのシンクライアントの導入事例をみるとデータエントリーセンターなど、1か所に端末を集中して置いて管理運用するイメージが強かったのだが、マクノート氏によるとセンター的なオペレーションは変化してきているという。たとえば、「ヒルトンホテルは予約センターを閉鎖して、担当者が自宅のシンクライアントで予約処理をするようになっている」。子供などいる環境でも安心できるセキュリティの高さと堅牢さが評価されているのだろう。

こうみてみると、確かに業務でPCを使うことはさまざまな問題をはらんでいる。OSやソフトウェアのアップデートなどの管理をクライアントごとに行わなければならない。OSの起動は遅く消費電力も大きい。とくに、運用とセキュリティについては大きな負担を強いられているといえる。 業務用PCのOSやソフトウェアの更新がされないのは、使っている業務プログラムが動作しなくなるからという例も少なくない。

それでも業務にPCが使われているのには、PCの価格が低下していること、今までのシンクラアントなどの端末のパフォーマンスが疑問視されてきたことなどが理由になっている。 マクノート氏によるとシンクライアントは十分高速でリッチコンテンツも扱えるようになっているという。業務需要として大きな可能性を感じさせるシンクラアントは、クラウドと仮想化というトレンドにのって大きく伸びていくのかもしれない。



著者プロフィール

  • EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)

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