2021年~2022年になると、「スマートホーム」関連のユースケースが市場を牽引
IoT市場を産業分野別に分類すると、2017年時点で支出額が多いトップ5は、組立製造、プロセス製造、官公庁、公共/公益、クロスインダストリーになる。こうした産業分野では以前から、さまざまな組み込み機器や社会インフラの運用効率の向上や、機器/インフラを通じたエンドユーザーの満足度の向上を実現する上で、IoTを活用している。
予測期間の後半(2021年~2022年)になると、IoTによって宅内の家電やHVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning)の利用を最適化する「スマートホーム」関連のユースケースが牽引し、個人消費者のIoT支出額が急増する。これは、従来から個人向けにインターネットサービスを提供していたAmazon、Google、Appleといった外資系大手ベンダーが、コグニティブ/AIシステム(以下、コグニティブ)などのデータアナリティクス技術をIoTと組み合わせることで、新規サービスの創出に注力していることに起因している。
その他のユースケースとして、農業フィールド監視、小売店舗リコメンデーション、院内クリニカルケア、遠隔健康監視、スマートメーター/スマートグリッド、テレマティクス保険、空港設備管理(乗客動線)、公共インフラ管理、公共安全システムが挙げられる。これらは、予測期間内のCAGRが20%を超える成長が期待される。
「IoT Gravity」が市場の拡大に大きく寄与していく
国内では、労働人口不足に対する懸念の広がりや、2020年の東京オリンピック開催に向けた景況感が上向きなことに起因し、IoTに対する注目度が一層高まっている。また、IoTに必要となるコネクティビティやコグニティブの多様化と高度化、エッジコンピューティングの浸透といった技術面の進化もIoT市場の成長につながっている。
さらに「IoT Gravity」をキーワードに、各産業で個別に活動しているベンダーやIoTユーザー企業、産業ごとに個別に活用されていたデータ、知見、ノウハウ、といったものが、産業をまたぐ形であたかもGravity(引力)のように引き寄せあって融合することが、IoT市場の拡大に大きく寄与していく。
IDC Japan コミュニケーションズのシニアマーケットアナリストである鳥巣悠太氏は、「IoT Gravityのエコシステム拡大に向け、企業組織内におけるデジタル変革に向けた目的意識の統一を図るべく、その組織体制のありかたについてサポート/コンサルティングを行うことがベンダーに求められる」と述べている。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「国内IoT市場 産業分野別/ユースケース別予測、2018年~2022年」にその詳細が報告されている。