この共同検証に先立ち実施した事前検証では、3か月分の運用データを利用し、ハードウェアやミドルウェアなどによって構成されるプラットフォーム層で検証した結果、エンジニアの呼び出し要否判断について、オペレーターの判断実績と同じ結果を出すことに成功した。今回の本番環境での検証では、監視範囲をアプリケーション層まで広げ、より複雑な判断の自動化を検証するほか、障害予兆の検知から対処方法の提示までを自動化する検証も実施する。将来的に、検証で得た成果は両社のサービスにそれぞれ適用し、幅広い分野での活用をめざすとしている。
日本ユニシスでは、金融機関をはじめとした各種システムの運用業務効率化をめざし、定型業務の自動化に取り組んできた。また、より複雑な判断が求められる非定型業務の自動化においてはAI技術の活用を検討していたという。一方、日立においても、システム運用自動化の実現に向けて、統合システム運用管理「JP1」とAIを組み合わせたさまざまな検証に取り組んできた。
今回、両社は次の(1) (2)の共同検証を開始する。このうち、(1)の事前検証として、過去3か月分の実運用データを使い、プラットフォーム層に限定して検証した結果、自動判断の結果がオペレーターの判断実績と同じになることが確認できた。今回の検証では、本番環境を利用し、監視対象をアプリケーション層まで広げる。
1. エンジニアの呼び出し要否判断の自動化
「JP1」のシステム監視によって発生するイベントメッセージと運用手順書をもとに、エンジニアの呼び出し要否判断を機械学習により自動化する検証。具体的には、運用手順書の項目やパラメーター情報、過去の対応履歴を機械学習することで、呼び出し判断を自動化するとともに、オペレーターやエンジニアからのフィードバックを継続的に学習し、判断精度の向上を図る。これにより、通常、オペレーターが複数の運用手順書を参照しながら判断していた複雑な業務を自動化することが可能となる。
2. 障害予兆検知の自動化
障害予兆の検知から、障害対応時に行う問題箇所の切り分けや対処方法の提示までを自動化する検証。過去のシステム性能障害情報をもとに要因ごとの監視項目や最適な対処方法を設定することにより、稼働しているシステムを予め学習した正常稼働時の状態と比較しながら監視し、障害予兆検知などの自動化を検証する。
日本ユニシスと日立は、今回の検証を通じて、オペレーターの業務負荷や対応時間の削減、運用品質の向上などの効果を検証する。24時間稼働するシステムでの運用自動化を実現することで、オペレーターの配置や勤務時間を柔軟かつ効率的に検討することが可能となり、昨今課題となっている働き方改革にも寄与する。また、人的資源をより上流かつ創造的な業務領域に有効活用することが可能となり、新たなイノベーションを創出するための取り組みに貢献するとしている。
今後両社は、今回の共同検証で得た知見やノウハウをそれぞれのサービスで活用していく予定だという。日本ユニシスでは、日本ユニシスのAI関連技術体系「Rinza」を構成するサービスの1つとして位置づけ、ITアウトソーシングサービスなど多方面での実用化に取り組んでいくという。
一方、日立では、「JP1」や「IT運用最適化サービス」の機能強化として取り込み、IoTプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」における活用を通じて、幅広い業種・業態へ展開し、企業の新たなビジネス価値創出に貢献していくとしている。