NTTデータは、昨年12月に実施した世界8カ国の金融機関と消費者を対象としたグローバル調査の結果を発表した。本調査はデジタルの世界において、金融機関がAIを使ってどのように顧客を獲得し、維持できるのか探ることを目的としている。
主な調査結果
金融機関の8割強は、顧客獲得・維持のうえでAIが戦略上重要な地位を占める、との考えに同意
金融機関では、顧客を獲得・維持していくのに今後AIが重要な役割を果たす、という点について、おおむね意見が一致しているという。
金融機関が顧客を獲得・維持するうえでの最大の課題は、顧客ごとにアドバイスをカスタマイズして提供するためのAIとデータの活用
金融機関が顧客を獲得し維持していくための様々な課題(信頼の確立、非銀行業者との競争、対面でのやりとりの制約など)があるなかで、最大の課題として挙げられているのは、顧客一人一人に合わせたアドバイスを行うためのAIの活用だという。AIの実装は容易でないうえ、活用への明確な戦略が整っていないケースも少なくない。
最もこの点に関連し、金融機関は、長年の取引関係のなかで蓄積された豊富な顧客データという、固有の強みをもっている。
顧客は、大きな支出全般の決定に関し、金融機関の良心的アドバイザーとしての役割を期待
消費者の多くは、金融機関がプロアクティブにアドバイスしてくれることを望んでいるが、既に予定済みの支払いについてのリマインド(消費者全体の53%)にとどまらず、半分近く(同46%)が、大きな支出の決断への良心的かつ理性的なアドバイザーとしての役割も期待しているとわかった。
顧客ごとに完全に個別化された提案に対し、個人情報を提供し追加的に支払うことに前向きな顧客セグメント(「未来派」)が拡大中
消費者は、「未来派」(Futurists)と「伝統派」(Traditionalists)に分類することができるという。前者は、「自らの金銭的福利向上の目的で、商品やサービスについて個別化された提案がされるのであれば、より多くのお金を支払う意思がある」人たちである。個人情報の提供にも前向きな「未来派」は、相対的に若く、テクノロジーに慣れ、デジタルの商品やサービスを好む傾向にあるとしている。
「未来派」が消費者全体に占める比率は、8カ国全体で35%となっていrが、日本ではそれより低く26%。一方そのなかで、「良心的アドバイザーとしての役割」や「財務管理に関する個別化されたオンラインガイダンス」に支払う用意がある人の比率は、8カ国全体より高くなっていた(それぞれ69%、73%)。
金融機関の93%が、個別化プロアクティブサービスの提供は「未来派」顧客を獲得・維持できる機会だと考えているものの、顧客ごとの個別推奨にAIとデータを活用している先は、わずか16%
金融機関による顧客向けカスタマイズには、(1)大まかな個別調整(各顧客セグメントを対象にする「1対多」での個別化)と、(2)完全な個別化(「1対1」での個別化)の、2つのレベルがある。これらについて、多くの金融機関ではまだ企画段階にあり、既に大まかな調整に向けてデータを活用しようとしている金融機関は全体の32%、完全個別化についてはわずか16%となっている。
現在これらの個別化に向けて取り組み中の金融機関の比率はイタリア(40%)で最も高く、以下、ドイツ(26%)、スペイン(26%)、ブラジル(20%)、米国(19%)、日本(18%)、メキシコ(15%)、英国(10%)と続いてるという。
また将来を見据えた金融機関では、今後3~7年の間に、顧客一人一人に完全に個別化されたプロアクティブサービスが差別化の手段となる、と考えていた。
金融機関の間では、個別化プロアクティブサービスを構築するための一連の活動が進行中で、14~18%の先が旅行会社や音楽・ゲームのプロバイダーなどのサービス業者と積極的に提携
取り組まれているサービス適用分野トップ3は、金銭的福利関連(財務アドバイスなど)、金融サービス全般、税務だった。それ以外の多くの分野でも、実際の投資や検討が進められているという。一部では、金融分野とは一見縁遠い、旅行会社や音楽・ゲームのプロバイダーとの提携も検討中ないし進行中だとしている。
こうした点について日本では、主な適用分野は金融サービス全般やセグメント調整した融資推奨となっているほか、金融関連以外については、8カ国全体に比べ飲食・音楽・旅行に取り組んでいる先が相対的に多め(ゲームとロイヤルティ関連は少なめ)となっているという。
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