デル・テクノロジーズは、公益財団法人がん研究会 有明病院(以下、がん研有明病院)が「Dell PowerScale 」(以下、PowerScale)ストレージを採用し、医療IT基盤のDXを達成したことを発表した。
「PowerScale」ストレージを採用したことで、今後がん研有明病院ではデジタル病理画像向けオンラインストレージの容量が6倍に増強されるほか、アーカイブ済み画像検索・閲覧作業のスピードを数分から数秒に短縮したという。さらに、今後のデータ容量増加にも迅速に対応できる環境を実現したほか、高信頼・高可用性を確保したとしている。
「PowerScale」導入以前、同病院の環境ではデジタル病理画像向けストレージ基盤の改善が必要となっていたという。がんの病理診断は、患者から採取した細胞や組織から標本(スライド ガラス)を作成し、顕微鏡で観察する方法で行われている。
もっとも、現在は標本をデジタル化した画像で病理診断(パソロジー)を行うことも可能になっており、同病院では病理診断をデジタルで行う「デジタル パソロジー」に取り組んでいた。しかし取り組むにあたって、オンラインストレージがそのボトルネックになっていたとのこと。生体組織診断の場合はスライドガラス1枚分で数GB、手術中の検体では10GB超のデータが十数枚作成されることもあるという。
さらに病理診断の依頼件数は年間で平均約4万件、毎月約40TBずつデータが増大する状況であったことから、従前のストレージ環境では増大する大容量データをすべて受け止めることができなかった。ストレージにデータが入り切らないため、診断が終わったデータは一定期間が経過した後に毎日テープライブラリー装置へ退避させ、過去データを再度参照する場合は、その都度テープからデータを戻す必要もあったとのこと。
だが今回導入した「PowerScale」ストレージはRAIDなどを用いる一般的なストレージと異なり、複数のノード間をまたいだ分散ファイルシステムによってデータを保護するため、仮に一つのノードが完全に故障してもデータ損失やサービス停止は発生しないという。また、構成条件を満たせば最大4ノード同時障害にも対応することが可能とのこと。
これにより、旧オンラインストレージの容量が100TBだったのに対し、現在では6倍となる600TBの実効容量を確保。約1PBのテープライブラリ装置を撤去する目途が付いたという。さらに今後の増設・拡張についても余裕で対応できる環境を実現し、DXを推進することができたとのことだ。
なお今回の取り組みは、日本の医療機関における「PowerScale」ストレージの初採用事例だという。デル・テクノロジーズは、今後も医療分野におけるICT活用を支援していくとしている。
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