2024年1月19日、アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWSジャパン)は、日本への投資計画および今後の方針に関する記者説明会を開催した。
冒頭、AWSジャパン 代表執行役員社長 長崎忠雄氏は「世界で数百万、日本で数十万のお客様にサービスを利用いただいており、LLMの開発などが加速している中、米国に次いでAmazon Bedrockを提供できた。これからもお客様のニーズに応え、寄り添っていく」と説明を始めた。
現在、AWSはグローバルで33ヵ所のリージョンを開設しており、今後は4つのリージョンを追加予定。民間企業をはじめ、政府・自治体、教育機関など幅広いユーザーがいるとして「東京リージョン開設以来、利用者は増えており、2011年から2022年までに1兆4,600億円のGDP効果、7,100人以上の雇用創出につながっている」と自信を見せる。
同社は、1月19日に日本経済への波及効果をまとめた『AWSの経済効果に関するレポート』を公開しており、「2023年から2027年までにデータセンターやネットワーク機器などへの設備投資、運用・保守費用などを含めて2兆2600億円の投資を行う。これにより、5兆5700億円のGDP効果、年間平均で30,500人以上の雇用創出を見込める」と強調。データ活用の重要性が増している中、「日本の皆さまに信頼される企業として貢献していきたい」と述べる。
また、衆議院議員・初代デジタル大臣の平井卓也氏が登壇。「ロシアのウクライナ侵攻をみたとき、データセンターがオンプレミスのままだったら立ち上がることは難しかっただろう。これを鑑みるとクラウドバイデフォルトは間違いない一方、地方自治体も含めた大プロジェクトであり、国家として乗り切らなければならない」と話を切り出す。日本にとっての重要インフラとは何かを考えたとき、かつては道路や水道などが真っ先に挙げらていたが、今はネットワークとデータセンターとも言えると指摘。能登半島地震の際には、ネットワークを使ってのリカバリーは機能しておらず、役に立ったのはスターリンクだけという話もあったという。見直しの必要性があるとし、「被災地の復興支援に全力をあげる中、次に取り組むべき宿題が増えた」と平井氏。また、バックアップだけでなくサイバー攻撃に対する対策も講じなくてはならないとも話す。
「まずは、今回のAWSの日本への長期的な投資を大歓迎させていただく。ドイツにGDPが抜かれると言われる中、デジタル分野での伸びしろはまだまだある。先進国で伸びしろが一番あるのは日本であり、そこにあわせた政策が進めば“デフレ感覚”から脱却できると考えている」(平井氏)
続いて、AWSジャパン 執行役員 技術統括本部長 巨勢泰宏氏は、昨年開催されたre:Invent 2023のハイライトを紹介。Amazon EC2の開発に触れると、「Graviton4」を発表してプレビュー提供も進んでいると説明する。また、ネットワーク領域においては低軌道衛星を利用した通信サービス「Project Kuiper」において、昨年2機の試作衛星の打ち上げに成功しており、日本においてはNTTやスカパーJSATとの戦略的協業に合意していると紹介。その他、Amazon QやNVIDIAとのパートナーシップ拡張、学習・推論用の第2世代AIアクセラレター「Trainium2」「Inferentia2」なども触れた。
既にグローバル1万超のユーザーがAmazon BedRockを利用しているとして、ファイザーと竹中工務店の事例を紹介。ファイザーでは新薬開発におけるHPCやAI利用を加速させており、年間で約10億ドルのコスト削減、開発スピードを10倍にするなどの成果が表れているという。また、竹中工務店は“デジタル棟梁”を目指した活用が進んでいる最中だとした。AWSジャパン 執行役員 デジタルトランスフォーメーション本部本部長 広橋さやか氏は、「LLMの開発には膨大なリソースが必要になるため、国内法人または拠点を持つ企業・団体に向けて開発支援プログラムを昨年7月から提供しており、間もなく成果も公表できる」と紹介。実際に参画するリコーでは、GPU利用環境をAWSで整備して構築期間の短縮に成功しているという。