2024年2月14日、イトーキは「Data Trekking」発表にともなう記者説明会を開催した。
同社は、2024~2026中期経営計画などで「オフィスDXビジネス」が事業成長の鍵になると掲げており、データを活用したオフィス運用サポートの開発・提供を推進。イトーキ 常務執行役員 スマートオフィス商品開発本部長 長尾和芳氏は、「働き方と環境の良好な関係性構築が生産性向上の鍵であり、データを道標としながらオフィスを進化させ続けることが重要だ」と説明すると、アジャイル型のオフィスを実現するためにコンサルティングサービス「Data Trekking」を発表した。
同サービスは、「ITOKI OFFICE A/BI SERVICE」というサービス群において、オフィス活用をサポートするアプリケーション間のデータ連携を担う「ITOKI OFFICE A/BI PLATFORM」上に蓄積されたデータの活用を促すもの。人的資本投資やチェンジマネジメントといった課題を解決するため、データの収集・分析から評価、提言・実行まで一気通貫した形でプログラムを提供するという(下図)。データの収集・分析から評価、提言・実行まで一気通貫した形でプログラムを提供するという。同社 スマートオフィス商品開発本部 ソリューション開発統括部ビジネス開発部 部長 藤田浩彰氏は、「データを収集・可視化するプレーヤーは多く見受けられるが、実際に専門家がインプリメントまでを一貫して行うサービスは新しいものだ」と自信をのぞかせる。
具体的には、ITOKI OFFICE A/BI SERVICEにある「Workers Trail」アプリケーションではIoTセンサーから収集したデータ、「Performance Trail」では従業員のパフォーマンスやビジネススタイルなどからスコアリングしたデータを収集。「Office Data Map」を用いてイトーキの専門家チームが分析した結果を基にレポーティングする。「個人情報はすべて暗号化した上で、個人が特定できないよう仮名IDに置き換えている」と藤田氏。オフィススペースの稼働状況や人の活動状況、組織サーベイデータ、レイアウトデータなどに加えて、ユーザー企業の独自指標を組み合わせて施策提言までつなげるという。
なお、Data Trekkingの提供にあたっては簡易版と標準版の2種類を用意。簡易版では、IoTデータによるオフィススペースの稼働データ取得とOffice Data Mapによる分析が除かれている。
Data Trekkingの導入事例として紹介されたのは、コンタクトレンズの製造販売などを行うメニコン社。昨年3月に竣工した本社西館に適用している。メニコン社はData Trekkingを利用することで、「あるフロアの大型テーブルは会議の隙間時間に使われているだけ」「ブースタイプのデスクを特定ユーザーが占有している」といったオフィスの状況が可視化され、解決策を打てるようになったという。また、従業員のストレススコアが5pt以上改善した人は、あるスペースの平均滞在時間が長いなどの相関関係も見出しているとして、「なんとなく感じていたことが明確に可視化された」とメニコン社はコメントを寄せている。
本会の最後に、イトーキ 代表取締役社長 湊宏司氏は、「私は日本オラクル在籍時から『オフィスはなんのためにあるのか』と考えていたが、突き詰めると生産性を上げるためだろう。オフィス什器のIoT化が進んでいない中、生産性が高くなるオフィスをデータドリブンで作っていくための最初の施策が『Data Trekking』だ。アフターコロナの今、いかに従業員が出社したくなるオフィスを作れるかが課題となっているように、オフィスはアジャイルに進化し続けなければいけない」とデータの重要性を強調。3月中旬にはスタートアップとのパートナーシップ締結を予定しており、既にAIを組み込んだプラットフォームも開発済みだと明かした。