アイデンティティ管理サービスを提供するOktaの日本法人Okta Japanは、業務アプリの利用動向を調査する年次調査「Businesses at Work 2024」の結果を発表した。同社の18,000社以上のユーザー企業が利用する7,000以上のアプリケーションと連携する「Okta Integration Network」(OIN)の匿名化されたデータに基づき、2022年11月1日から2023年10月31日までのデータを分析しており、今回が10回目となる。調査の結果からは、仕事に最適なアプリを選択する「ベストオブブリード」化、 パスワードレス、高保証のMFA要素導入、自動化などの進展が明らかになった。
1社あたりの平均導入アプリ数は93
ここ数年、1社あたりの平均導入アプリ数が伸び悩んでいたが、今年は前年比4%増の93となった。国別に見ると、米国は平均105と最も多く、日本は平均35と最も少ない数だった。さらに、企業規模別に見ると、従業員2,000人以上の大企業の平均導入アプリ数が最も多くなり、前年比10%増の231だった。従業員数2,000人未満の中堅‧中小企業では、前年比4%増の72だった。
「導入アプリが増加に転じたということは、企業が単に既存のアプリでやりくりをするということではなく、ベストオブブリードのアプリを選択し、拡大を続けているということを意味している」とLauren Everitt氏は言う。
1Password、Amazon Businessが成長、monday.comが初ランクイン
上位50アプリで最も成⻑したのは、1Password、ユニークユーザー数ではAmazon Businessだった。他にはFigma、Miro、HubSpot、Snowflake、GitHub、knowbe、Sentry、Zscalerも、昨年に続き成⻑。monday.comが今年初めて成⻑リーダーにランクインした。
上位15アプリのランキングに注目すると、顧客数でトップのアプリは依然としてMicrosoft 365だが、Google WorkspaceがAWSを抜いて第2位に浮上した。
企業規模別に見るとスタートアップ企業で最も人気のあるアプリの第1位はGoogle Workspaceで、第2位はAWS、Slackの順位も高く第4位だった。一方、Fortune 500企業で最も人気のあるアプリの第1位は、Microsoft 365で、その後SalesforceとAWSが続く。また、日本国内で最も人気のある上位はSalesforce、Box、Zoom、Google Workspace、Slackだった。昨年同様、Salesforceが顧客数とユニークユーザー数ともに最も高い伸びを示した。
急成長は、データコンプライアンスのVanta、営業支援のZoominfo
最も成⻑した上位10アプリの第1位は、データコンプライアンスのアプリのVantaで顧客数の増加率が前年比338%増。第6位にランクインしたDrataもデータコンプライアンスのアプリで、上位1にデータコンプライアンスのアプリが2つランクインしたのは初めて。理由としては「組織が複雑化し、規制環境での舵取りを求められること、自動化や生成によりデータのコンプライアンスが重要となったこと」とEveritt氏。
第2位には、営業支援アプリのZoomInfoがランクインした。営業支援アプリがランクインしたのは、2022年以降初めて。業種別で導入状況を分析したところ、テクノロジー業界ではVantaが顧客数で410%増、営業支援・マーケティングのZoomInfoがユニークユーザー数で638%増となった。
MS 365ユーザーの45%はGoogle Workspaceも使用
今回、Microsoft 365を使用しているOktaの顧客企業の37%は、4つ以上のベストオブブリードのアプリを導入しており、4年前の28%から増加している。
個別のアプリを見ると、Microsoft 365を利用している企業のうち、Google Workspaceの導入率は4年前の33%から45%に増加している。また、Slackの併用率も上昇しており、Oktaの顧客のMicrosoft 365のユーザー企業の38%がSlackを導入している。企業規模別に見ると、Microsoft 365を導入しているテクノロジー系のスタートアップ企業の64%はGoogle Workspaceも導入しており、Fortune 500企業の42%はGoogle Workspaceを導入している。「既存のスイートにとらわれずに、その仕事、その仕事に最適なベストオブブリードのアプリを選択している」とEveritt氏。
パスワードレスが成長、多要素認証は高保証に
パスワード認証では、シームレスな認証に移行する取り組みとして。パスワードレスも増加しているおり、日本は米国に次いで2番目に多く、生体情報が他国に比べて多く採用されている。
MFA(他要素認証)も進んでいる。「従来の質問方式のような低保証の認証方式が廃れていく一方で、セキュリティキーや生体情報のような高保証のMFA要素が成長した」とEveritt氏。フィッシング耐性が高く高保証の「セキュリティキーまたは生体情報」が前年比で最も増加しており、従来の「セキュリティ質問」や「電子メール」などの低保証の認証は、減少傾向にある。しかし、音声通話やSMSといった低保障の要素である電話の利用が昨年の2倍に増加しており、「SIMスワッピング攻撃が発生しているため懸念材料」とEvelitt氏は警告する。
自動化については、アプリの配布や不審検知、運用効率化などの定型的なプロセスの自動化が進んでいる。この分野ではOkta WorkFlowsの伸びが注目されるとEvelitt氏はいう。テクノロジー業界でのOkta Workflowsの導入アカウント数は前年比36%増、プロフェッショナルサービスの業種では前年比65%増加した。