パロアルトネットワークスは8月8日、「日本国内の中小企業のサイバーセキュリティに関する実態調査 2024年版」に関して実施した調査結果を公表。同日、パートナービジネス戦略の発表とあわせて記者説明会を開催した。
同調査を主導した、同社 チーフサイバーセキュリティストラテジストの染谷征良氏は、中小企業を取り巻くサイバーセキュリティ環境として、サイバー犯罪や攻撃対象領域の増加を挙げる。その上で、インシデントのきっかけになっているのは「脆弱性や設定ミスなどがそのままになっていること」だとした。中小企業でセキュリティ強化が求められるなか、同社では中小企業(従業員50~499名)でセキュリティ製品やサービス購入における決裁権者を対象に調査を実施したと説明。
調査概要
- 調査方法: インターネット調査
- 調査期間:2024年3月14日~18日
- 調査対象:従業員50〜499名の中小企業でセキュリティ製品・サービス購入における決裁権者、選定権者523名
- 従業員規模別内訳:50〜99名(174名)、100〜299名(175名)、300〜499名(174名)
- 地方別内訳:北海道・東北(63名)、関東(70名)、北陸(63名)、東海(69名)、近畿(69名)、中国(66名)、四国(60名)、九州・沖縄(63名)
- 業種別内訳:製造業(129名)、非製造業(394名)
2023年にサイバー犯罪被害を経験したと回答した人が44%だったという。被害内容の上位3位は、マルウェア感染(26%)、システム・サービス障害(20%)、個人情報漏えい(15%)。
また、セキュリティ対策に関与する担当者を問うた質問では、IT担当が兼務(40%)、非IT人材が兼務(34%)で、専任は15%に留まった。9%は担当者不在と回答。染谷氏は「兼務して対応している人が多く、セキュリティの専門性のない人が従事せざるを得ない状況である」と話す。
回答者の63%は、運用・保守を外部に委託しているという。そのうち「運用・保守内容を把握していない」と回答したのは約3割だった。染谷氏はこの点を問題視し、「責任分界点はマーケット全体の問題」と指摘した。
セキュリティ製品やサービスの購入時に重視する情報源として、6割以上は販売元のベンダーからの提案や紹介と回答。購入するときの重要な点を質問したところ、「性能の良さ」(49%)、「運用コスト」(30%)、「管理のしやすさ」(28%)の順だったという。染谷氏はこの結果に驚いたとしつつも、中小企業では品質を重視していることが明らかになったと強調した。
染谷氏は最後に、中小企業の課題は「ヒト・モノ・カネ・情報」に集約できると話す。「底上げしていくには、品質の高い製品・サービスが求められている。人材不足が深刻な中小企業のため、ベンダー支援によるエコシステムが重要」とまとめた。
パロアルトネットワークスでは中小企業向けにどのような支援を展開していくのか、同社 エコシステム事業本部 本部長の鈴木康二氏が説明した。同社製品はほぼ100%パートナーを通じた提供だという。これまで顧客の多くが大企業だったが、今後は全国の中小企業にも拡大していくとして、パートナー企業を現在の400社から3年で1,200社に増強する計画を明らかにした。
新規パートナー向けには、製品を知ってもらうために、ノウハウ共有のトレーニングや検証環境の提供など、特別プログラムをリリースするという。同社は、東京を中心に大阪、名古屋に支店を設けているが、それ以外の地域も支援できる体制を目指す。特に、北海道・東北、中四国、九州・沖縄を強化地域として、8月以降、地域担当を配備していく。
パートナープログラム「NextWave 4.0」についても、順次、中小企業向けに再編する。中小企業向けマネージドサ-ビスによる最低ライセンス数の撤廃や、在庫モデルの展開を行うとした。
さらに、中小企業向けにセキュリティ製品を導入しやすくするために、プラットフォーム化を推進していくという。具体的には「ネットワーク」「エンドポイント」「クラウド」の3領域だ。販売パートナーはこれらのプラットフォームを用いて、マネージドサービスを提供するとした。
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