日本電信電話(以下、NTT)と北海道大学は、未来の一次産業実現を目指し、ビジョン共有型共同研究を開始した。
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(左から)日本電信電話株式会社 副社長 川添雄彦氏、国立大学法人北海道大学 学長 宝金清博氏
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同共同研究では、大量のセンシングデータ、ディープラーニング、およびシミュレーション技術などNTT、北海道大学それぞれの強みを持ち寄り、サステナブルで超省力、高品質生産可能な未来の一次産業モデルを協創し、社会実装を目指すとしている。
共同研究のビジョンおよび研究テーマ
未来の一次産業では、大量のセンシングデータ、ディープラーニング、およびシミュレーション技術を活用することによって、一次産業の現場へ人が赴かなくとも、デジタル空間上で状況確認・最適な作業計画作成が可能になるという。そして作成された作業計画に基づき、ロボットが人に代わって最小限の資材を使った自動作業を行うことで、サステナブルで超省力、高品質生産が実現されるとしている。
このような未来の一次産業を実現するためには、一次産業の現場における大量のセンシングデータを可視化するデジタルツイン、デジタルツインを一次産業従事者が使いこなす必要がある。また、最適なシミュレーション結果を得られるよう支援するAI、デジタル空間上でのシミュレーション結果を忠実にリアル空間で再現・作業を可能にするロボティクス、デジタルツインとロボティクスをつなぎ、リアル空間で起きた問題にもデジタルツインからリアルタイムに最適なシミュレーション結果を返し、ロボティクスの自動作業継続を可能にするIOWN、それぞれの要素技術を研究開発し、連携させる必要があるとしている。
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北海道大学の強みとなる、一次産業におけるロボティクス・デジタルツインに関する技術、NTTの強みとなる、IOWN・AI・デジタルツインに関する技術を組み合わせ、ビジョン実現に必要な要素技術の創出に取り組むという。2025年度について、まずは農業をフィールドに、超省力かつサステナブルな農作業の自動化につながる圃場のデジタルツイン、ロボット農機を安全に遠隔監視・操縦するロボティクスの実現を目指した次の2つの研究テーマに取り組むとしている。
- 高精度なデジタル圃場での生育・環境負荷が最小となる農作業シミュレーション実現:すべての農地の状況を遠隔から把握できるようにするため、圃場を高度にデジタル化する技術の実現に取り組む。また、デジタル化した圃場に様々な情報を重畳して作物の生育シミュレーションを高分解能で実施可能にする技術にも取り組む予定。これにより、施肥や農薬散布を最小限にとどめた農作業計画の立案など、環境負荷を低減するサステナブルな農業の実現を目指す
- 人の現地作業を不要とするロボット農機の自動運転・遠隔操縦の実現:限りあるネットワークリソースを活用して安定的にロボット農機等の自動運転・遠隔操縦を実現するため、農機の走路に応じた通信品質を計測して農機制御へフィードバックする技術の実現に取り組む
上記2つのテーマが実現されることで、農家が複数の離れた圃場について、現場へ足を運ばずにデジタル空間上で農作業が可能となるほか、肥料や農薬の使用量を最小限に抑えた環境に優しい農業が実現できるという。さらに、デジタル空間での指示に基づき複数のロボット農機が同時に自動作業することで、生産性を数倍に向上させることが可能だとしている。
共同研究の体制
同研究では、北海道大学における3つの研究組織、NTTにおける3つの研究所が参加するという。
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共同研究成果により実現されるサービスイメージ
共同研究は4年間を予定しており、2030年には各研究テーマで研究開発した成果を組み合わせ、農業分野から、圃場に関する様々な情報を確認・シミュレーションすることが可能なデジタルツインプラットフォームサービスの実現を目指すとしている。具体的な実現イメージは次図のとおり。
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実際の圃場の状態を、複数台の自律ドローンやマルチロボットにより計測し、それを圃場から離れたところにある「スマート農業オペレーションセンター」に集約。デジタルツインプラットフォーム上にデジタル圃場を構築するという。これにより、作物の状況のみならず、圃場の水分量や温度、天候といった圃場環境においてもデジタル空間上で確認・予測することができるとしている。このプラットフォームの利用により、農家は現場へ行かずに圃場の土壌状態・周辺環境・作物の生育状況をリアルタイムに確認できるとのことだ。
また、シミュレーション結果に基づき、ロボットトラクターやロボットコンバインなど、複数のロボットやドローンがリアル空間で同時に自動で作業し、人の現場作業の大部分をサポートすることが2030年時点で可能になるという。また、これらのロボットの自動作業の様子も映像としてスマート農業オペレーションンセンターへ伝送され、遠隔から監視を行うことができるとしている。
今後の展開
初年度は性能要件の明確化と各種データの計測、2年目からテスト環境の構築に取り組み、3年目からテスト環境を使った各種技術の検証評価に取り掛かる予定だという。NTTグループで連携し、それぞれの研究テーマについて研究開発を終えた技術から2030年以降順次商用化していくことを目指すとしている。
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