2025年12月19日、LayerXは、経費精算システムの導入・選定に関わった経理・財務担当者471名を対象に、「経費精算の差し戻し・修正」に関する実態調査を実施したと発表した。
調査概要
- 調査時期:2025年11月14日〜2025年11月18日
- 調査方法:インターネット調査
- 調査対象:「経費精算システム」の導入・選定に関わった経理・財務担当者471名
- 留意事項:小数点第二位以下を四捨五入
調査結果
1. 手戻りの発生状況:90%以上の企業で修正・差し戻しが恒常的に発生
経費精算における手戻りは、一部の特定企業が抱える問題ではなく、業界全体に共通する普遍的な課題であることが明らかになったという。調査によると、差し戻しが1件以上発生すると回答した企業は90.0%、修正が1件以上発生すると回答した企業は93.2%と9割以上の企業で差し戻し・修正が恒常化している。
2. 差し戻し・修正の原因の構造:ミスの原因の多くは「会社独自の規程の知識不足・判断ミス」
発生するミスの内訳を分析した結果、ミスの種類の過半数が「金額の入力ミス」といった「単純な入力・計算ミス」よりも、「自社規程に関する不備」に起因するものであることが判明。特に発生割合が高い原因の上位には「領収書・証憑の不備(46.7%)」や「日付・用途の記載ミス(40.2%)」が挙げられているとのことだ。
3. 差し戻し・修正を減らしたい理由:単なる効率化ではなく、心理的負担の軽減が目的
手戻りを減らしたい理由を尋ねたところ、「修正対応が行われるまで常に気になってしまう(43.8%)」という心理的負荷や、「提出者との関係が悪くなってしまうかもしれない(20.4%)」といった人間関係の摩擦への懸念が上位に挙がった。この結果は、企業が手戻りの削減に求める価値が、「効率化」や「コスト削減」といった側面よりも、従業員の心理的負担の軽減にあることを示しているという。
4. 差し戻し・修正を減らすための取り組み:対策は「人手による教育」に集中
現在企業が実施している手戻り削減策を分析すると、その大半が「詳細なマニュアルの整備(39.3%)」や「定期的な説明会・研修の実施(37.1%)」といった人手による教育・知識付与、そして「個別・緊急の問い合わせ対応(20.2%)」などの人手による個別対応・事後処理に集中していた。これは、従来の経費精算システムでは、会社独自の複雑な規程や運用ルールに対応しきれないという機能不全を、結局は人の手で補っていることが示唆されるとしている。
5. 発生割合と決算締め日の関係性:決算締め日が早い企業ほど、差し戻し・修正の発生割合が高い傾向
差し戻し・修正の発生割合と決算締め日の関係性を分析した結果、「差し戻し・修正の発生割合が高い企業ほど決算締め日が早い」傾向がみられたという。
具体的には、差し戻しの発生割合が10割(すべての申請で発生)の企業では平均決算締め日が5.5日であるのに対し、発生なしの企業では6.2日となっている。この結果から、決算早期化の恩恵がある一方で、修正による月末月初の経理の負荷の増大が起きている可能性が示唆されるとのことだ。
調査結果からの示唆・提言
今回の調査結果は、経費精算業務が抱える差し戻し・修正の構造的課題を乗り越えるために、以下3点の視点が重要であることを示しているという。
1. 差し戻し・修正の真因の再定義:「自社規程に関する不備」こそが真の課題
手戻りが発生する主因は、「単純な入力・計算ミス」よりも、「自社規程に関する不備」である。従来の経費精算システムでは、会社独自の複雑な規程や運用ルールの遵守促進・ミス防止には限界がある。
2. 手戻り削減の価値:「働きやすさ」への直接的貢献
手戻り削減の価値は、コストや業務効率化といった側面だけではなく、経理担当者の心理的負担を軽減し、働きやすさ向上に直結する重要な経営施策として位置づけられる。
3. 決算早期化への新戦略:「ミスの完全な防止」ではなく「ミスの早期発見・修正」
手戻りゼロという完璧なミスの防止を目指すのではなく、経費精算プロセスの初期段階で漏れなくミスを迅速に発見し、即座に修正できることが決算早期化につながる。この「ミスの早期発見・修正」の手間をいかに減らせるかが重要である。
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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