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ブレインパッドAAA・辻CEOがNVIDIA GTC 2026の現地報告──Vera Rubin、NemoClaw、AIファクトリーを解説

BrainPad AAA・「NVIDIA GTC 2026」現地参加報告会見

 ブレインパッドの100%子会社でAIエージェント事業を手がけるBrainPad AAA(エーキューブ)の辻陽行CEOは2026年3月25日、メディア向け勉強会を開催し、米カリフォルニア州サンノゼで3月16〜19日に開催された「NVIDIA GTC 2026」の現地参加レポートを報告した。今回のGTCについて、辻氏は「データセンターからハードウェアまでを統合し、消費した電力に対してどんな収益を生むかというフェーズに話題が明確にシフトした」と総括した。

BrainPad AAA 代表取締役CEO 辻陽行氏

 GTCのキーノートで前半の大半を費やしたのが、次世代GPUプラットフォーム「Vera Rubin(ベラルービン)」の詳細説明だった。現行のBlackwellシリーズ比で、推論トークン単価が1/10、同電力での推論スループットが10倍、MoE(Mixture of Experts)モデルの訓練に必要なGPU数が1/4、1GPUあたりの推論演算性能が5倍(50 PFLOPS、NVFP4)となる。

 辻氏はこの効率化の核心について、「72個のGPUとCPUが1つのラックに収まり、GPU間の通信遅延を極限まで最適化した設計になっている。72個のGPUをまるで1個のように扱えるようになったことで、ものすごく効率が上がっている」と説明した。「Vera Rubin NVL72」と呼ばれるラックスケールシステムがNVLink 6 Switchでこれを実現している。また今回のアップデートでは、買収したGroq社の超低遅延推論専用チップ「Groq3 LPU」が加わり、計7チップ構成のプラットフォームとして紹介された。

Vera Rubin NVL72ラックスケールシステム [画像クリックで拡大]

 キーノート後半でNVIDIA CEOのジェンスン・フアン氏が強調したもう1つの柱が、AIエージェント基盤「NemoClaw(ネモクロー)」だった。辻氏はその背景としてオープンソースの「OpenClaw(オープンクロー)」を紹介した。2025年11月にオーストリアのピーター・スタインバーガー氏が公開したフレームワークで、公開からわずか1週間でGitHubスターが10万を超え、同種プロジェクトの130倍という速度で広がっているという。

 SlackやTeamsに接続し、「請求書の処理をしておいて」と投げ込むだけでPC内の請求書を探し出し、処理まで完結させる。「指示だけ出しておくと代わりにやってくれるというところが、かなり現実に近づいている」と辻氏は評した。フアン氏はキーノートで「OpenClawはパーソナルAIのOSになる」と強調したという。

 ただしOpenClawは個人利用前提でセキュリティ基盤が整っていない。辻氏は「権限管理やファイル削除の制限といったセキュリティ基盤がセットで整わないとビジネスでは使えない」と指摘する。NemoClawはOpenClawを参照しつつ、エンタープライズ向けのセキュリティ基盤を加えたフレームワークとして位置づけられる。オープンソースのためモデルを問わず動作し、「完全にローカルで閉じて実行できるため、機密情報を外部に出せない企業にとって大きい」とも述べた。

 今回のGTCを通じて最も鮮明になったメッセージとして辻氏が挙げたのが「AIファクトリー」という概念だ。フアン氏はキーノートで、電力供給量(ギガワット)の上限が増やせない以上、1ワットあたりのトークン生成効率をいかに高めるかが収益に直結すると主張した。

AIファクトリーの5層構造 [画像クリックで拡大]

 辻氏はこの構造をロボットアームの例で解説した。「1回の推論に100円かかり1時間あたり2万円相当になるなら誰も導入しない。だがチップとインフラの効率化で1/10になり200円になるなら導入する企業が出てくる」という。「データセンターがあってソフトウェアで作ります、というのがもう通用しない。消費した電力に対してどんな収益を生むかを統合して考えるフェーズに移っている」と述べた。

 展示会場でヒューマノイド型とアーム型の両ロボットを比較した辻氏は、ヒューマノイドについて「棚にボックスを置くだけでも細かく微調整しながらゆっくりした速度感での作業だった。この電力を消費させるぐらいならアルバイトの方が100倍ぐらい早い」と率直に評した。一方、アーム型は「費用対効果が出る水準に近づいてきている印象だった」とした。

ヒューマノイドとロボットアームの比較 [画像クリックで拡大]

 フィジカルAI普及の壁として辻氏が挙げたのが行動データの不足だ。「言語モデルはWebにデータが転がっていたが、ロボティクスでは筐体を作り実験してデータを得る必要がある」と指摘する。NVIDIAのシミュレーション基盤「Isaac」や物理世界モデル「Cosmos」で仮想空間上に訓練データを生成する手法が強調されており、「Sim-to-Realギャップ」をいかに埋めるかが実用化の鍵になるという。

 辻氏はGTCを踏まえた示唆として、Vera Rubinによる推論効率向上でクラウドベースのAIサービスへの参入障壁が下がりつつある点を挙げた。「日本企業は機密情報を守りながらエッジ環境でオープンモデルを使い、結果が環境内で閉じていることが求められる」という。

 一方で専門人材の育成が不可欠だとも指摘した。「AIになって人がいらないという話ではなく、こうしたことができる人をどれだけ育てられるかが、AIファクトリーに移行できるかを決める。ハーネスエンジニアリングとでも呼ぶべき能力が各企業に求められるようになっている」と辻氏は語った。

 BrainPad AAAは2025年3月にブレインパッドの100%子会社として設立され、「エージェントネイティブな社会を実装する」をミッションに、現場作業の動画からマニュアルや報告書をAIエージェントが自動作成するサービス「COROKO(コロコ)」を展開している。ブレインパッドは2025年12月に富士通グループに参画しており、GTCには富士通からも50名以上が参加したという。

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この記事の著者

京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...

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