日本オラクルは2026年7月30日、クラウド型ERP「Oracle Fusion Cloud Applications」に組み込む高度なAIエージェント群「Oracle Fusion Agentic Applications」と、その開発基盤「Oracle AI Agent Studio」のアップデート発表した。
同社の理事 クラウド・アプリケーション事業統括 事業戦略推進本部 兼 AI実践エンジニアリング部 本部長の中山耕一郎氏はまず、Fusion Cloud Applicationsが提供するAI機能を3段階で整理した。2023年から提供する「生成AI+企業データ利用」は業務タスクをアシストする問い合わせ型、2025年から提供する「AIエージェント」は特定業務や業務プロセスの一部を自動化するものだという。そして2026年から提供を始めた「エージェント型アプリケーション」(Agentic Applications)は、複数の事業領域を横断して業務目標そのものの達成を自律遂行するものだと位置付けた。
エージェント型アプリケーションの具体像として、経営層が使う「経営意思決定支援ワークスペース」のデモを示した。主力製品の生産能力が受注需要を満たせず収益に悪影響が出るというアラートを起点に、AIエージェントが営業部門へ段階的納入の打診を提案し、生産計画の前倒し可否を生産・調達部門に確認する。人員育成計画の見直しを人事領域に、資金調達方針の検討を財務領域にそれぞれ問い合わせながら、部門を横断した意思決定案をまとめていく流れだ。
このデモについて中山氏は「部門間の調整や人のコミュニケーションで数ヵ月かかっていた対処を、数日から1週間という時間軸に短縮できる」と説明した。意思決定の過程が可視化されることでブラックボックス化を避けられる点も利点に挙げた。
中山氏はこの仕組みを、エージェント型アプリケーションの本質としてあらためて整理した。日々の業務やオペレーションは何らかの目的・目標に従って行われており、例えば営業部門であれば収益の最大化や市場での認知向上といった目標がある。「こうした目標に従った業務そのものを自動化し、AIエージェントが業務目標の成果を出すのが、エージェント型アプリケーションの本質的な内容」だと述べた。AIエージェント・チームが予測・見通し、計画、実行、推論のサイクルを回しながら、収益・利益率や納期順守、供給・生産レジリエンスの向上、マネジメント工数・生産性、人材育成といった業務・ビジネス成果を導き出す構造だとし、エージェント型アプリケーションはFusion Cloud Applications内でネイティブに動作すると説明した。
中山氏は、こうしたエージェント型アプリケーションをこのタイミングで提供できる背景として、Fusion Cloud Applicationsが営業・購買・在庫・会計・人事といった全業務領域のデータを単一のデータモデルで統合管理している点を挙げた。「業務ごとにシステムやデータが分かれている他社のERPでは、AI活用のためにデータのインテグレーションや論理モデル設計をあらためて構築する必要があり、年単位のコストと時間がかかる」とした上で、「ここまで統合・統一されたアーキテクチャを持つのはオラクルだけだと思う」と述べた。
続いて登壇した同社のクラウド・アプリケーション事業統括 事業戦略推進本部 AI実践エンジニアリング部 Fusion AI Evangelist 小野俊隆氏は、AIエージェント開発プラットフォームの最新アップデートを「検索から実行へ」「AIエージェント開発の民主化」「プロコード開発」「エンタープライズガバナンス」「テストと安全な接続」の5つの観点から説明した。
小野氏は、生成AIが相談役として実行権限を持たないのに対し、エージェント型AIは企業の権限・承認の枠組みの中で自律的にシステムを操作しタスクを完遂する存在に変わりつつあると位置付けた。その上で「開発の民主化のスピード感と、企業内でガバナンスが効くかという統制や説明責任の両立が、実運用に至らない要因になっている」と課題を指摘した。
この両立に向け、開発基盤「Oracle AI Agent Studio」には、ビジネスユーザー向けの自然言語ベースのノーコードツール「Agentic App Builder」を用意した。業務目標をアイデアとして入力するとAIがエージェントの組み合わせやワークフローを自動生成し、自然言語での追加要求や修正を経てテスト・リリースへ進む流れを示した。
開発者向けには、VS CodeやCodex、Claude Codeなどの使い慣れた開発ツールを使える「AI Studio Skill」も提供する。例外条件や再試行条件、タイムアウトなど自然言語では曖昧になりやすい仕様を構造化し、Gitベースのライフサイクル管理やCI/CDによって「アプリの状態を人の記憶や会話履歴ではなく、管理可能な成果物として固定する」機能を提供するという。
ガバナンス面では、絶対に誤ってはならない業務ルールをコード化して呼び出す「ポリシーモデル」を導入した。福利厚生の適格性ルールや料金表などの文書をアップロードすると実行可能な関数とテストケースが生成され、ワークフロー内でPolicy Nodeとして呼び出す仕組みだ。ルールを更新すれば、それを呼び出す全ワークフローに再デプロイなしで反映されるとした。
このほか、ロールベースアクセスコントロールやプロンプトインジェクション対策のガードレール、全アクションを自動記録する監査証跡機能を備えるという。100種類以上のエンタープライズコネクタを用意し、外部システムとの接続にも対応する。
デプロイ前には、ライブデータに頼らずシナリオを自動生成してテストする仕組み「ATLAS」を紹介した。精度・コスト・処理速度を事前に検証してから本番環境へ移行する運用だという。
説明会の最後には、AIエージェントの認定を受けた専門人材が8万5,536人、組み込み済みのエージェントが1,000以上、顧客がすでにデプロイしたエージェントが7,000以上という実績数値が示された。機能アップデートは隔週ペースで約50件のリリースを続けているという。
日本オラクルは企業のAI活用を支援する専任組織「AI実践エンジニアリング部」を設けている。現状業務とAI導入後の業務を比較しながら適用範囲を体験する「AI EXPERIENCE プログラム」(Inspire・Ideate・Build・Alignの4段階)や、ユーザーグループ「OATUG」でのAIコミュニティ推進などを通じて、標準機能にとどまらないカスタムAIの適用や本番運用への並走を支援していく方針を示した。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
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