IT人材育成に全力で取り組みたい
イベントは、ITSSユーザー協会(ITSSUG)の主催により、IT人材育成にITスキル標準を活用したいと関心を持つ関係者を多数集めて行われた。
基調講演では、「高度IT人材の育成にむけて」と題し、経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課 課長補佐 奥家敏和氏が登壇。IT人材育成に対する、経産省の取り組みを紹介した。
資源のない日本ではIT分野への成長期待は高く、IT産業自体の売上高も着実に伸びてはいるが、就業者数の横ばい状態がここ4~5年続いている。IT人材の有効求人倍率は3.45にも達しており、奥家氏によれば「3を超えるのは異常。圧倒的な人材不足」とのこと。
このような状況を受け、
- どう人を育てるのか?
- 能力をどう判定するのか?
- 人材育成手法にどう取り組んでいくか?
といった課題を挙げ、これらの施策の具体像を業界全体で可視化、共有化していくことが大事だと述べた。
また、産学人材育成パートナーシップの推進体制や、現在審議が行われている新しい情報処理技術者試験にも触れ、「初級システムアドミニストレータ試験」を発展的に解消する形で「ITパスポート試験」を創設することなどの意義を説明。IT人材育成に全力で取り組んで生きたい、とした。
スキル標準の活用
続いて、ITSSユーザー協会 専務理事 高橋秀典氏が「スキル標準活用の勘どころ」と題した講演を行った。
高橋氏によれば、日本では、「間接コストの削減」としてIT投資を考える傾向にあるが、米国や韓国は、「顧客満足度の向上」を一番にあげており、このままでは、手作業を自動化し効率を上げるためのツールとしてITを活用するにとどまるのではないかと懸念。
また、IT産業においては人手不足以上に、
- 上流工程スキル
- コミュニケーション、ヒューマンスキル
- 課題発見力、コンセプチュアルスキル
といったスキル不足があるとした。
一般に、「ITスキル標準」を話題にする場合、IPAが提案しているITSSキャリアフレームワークそのものだと思っている人が多い。しかし、ITスキル標準の定義内容は共通指標に過ぎず、自社のビジネス戦略にあわせて企業固有の定義内容に置き換えた指標を設定することが求められる、と強調。
「経営判断や、ビジネス戦略が伴わないままITSSを導入することは、自社のビジネスや技術を担い、競争力を支えるプロの重点育成にはつながらない。自社に必要な部分だけを参照すればよく、すべて使う必要はない」と述べた。
また、ITSSが、顧客にサービスするという観点で定義されているのに対し、UISSは、IT部門がユーザ部門にサービスをする観点と、自社の経営戦略を受けてIT戦略を立案、実施するという企業内に向けた観点で定義されており、ITSS+UISSの組み合わせで活用することで、企業にあわせた人材像や育成の仕組みを構築することができる、と説明。
目標となる具体的なIT人材モデルとして、「PDCAを自分で回せる人」とし、こういった人材を企業は登用したり、育成したりする必要がある、としている。知識や経験も大事だが、自分のおかれている状況を認識し、相手の期待を把握できるコンピテンシーの高い人材が、企業に求められるだろうということだ。
最後に、ITSS/UISSの活用と成功は、
- 経営者が自らリーダーシップを取る
- 優秀な人材をアサインする
- 会社の「魂」を込める
とポイントを挙げ、ITSS/UISSを中心とした、IT人材育成に企業が真剣に取り組むことで、社員にとっては、その企業が魅力的に見えるようになるだろう、と締めくくった。
【関連リンク】
・ITSSユーザー協会:ITSS Users' Conference2008スキル標準の変革と融合開催のご案内