企業はビッグデータインフラストラクチャのテクノロジー動向を注視すべき
ユーザー企業ではビッグデータの活用度合いに応じて、インフラストラクチャ導入におけるテクノロジーの重要性が高まっている。IoTやコグニティブ/AIシステムによる需要の拡大を受け、ITサプライヤーからは、用途に適したテクノロジーが提供されるようになってきている。IDCでは、デジタルトランスフォーメーション(DX)による競争優位性を確保するため、ユーザー企業はビッグデータインフラストラクチャのテクノロジーの動向を注視すべきであると提言している。
今回、ビッグデータを活用するユーザー企業がテクノロジーをどのように選定しているのか、インタビュー調査を実施した。その結果、ユーザー企業におけるテクノロジーの選定や利用状況は、ビッグデータの活用度合いに応じて3つのフェーズに分類できることがわかった。具体的には「導入期」「定着期」「用途拡大期」の3つになる(参考資料)。各フェーズには特有の懸念事項が存在しており、それぞれの懸念事項への対処方法がテクノロジーの選定に大きな影響を及ぼしていた。
「導入期」では、導入時における投資回収リスクの回避を優先し、保有機材の再利用を含む汎用性の高いインフラストラクチャや、人的リソースの負荷を軽減するために既存のハードウェアやソフトウェアと同一のベンダー製品を選定する傾向があった。メリットである活用効果の算出が難しいことを背景に、デメリットであるリスクの最小化によって投資効果を最大化するといったアプローチをとることで経営層の判断を促し、早期の利用開始を狙ったものとみている。
一方、本格運用にあたっては利用機会の少なさが課題になることから、「定着期」では利用者を獲得しやすいSQLの利用環境を整備したとみている。その後の「用途拡大期」では、用途の増加によってさらなる成果が求められるため、それぞれの用途に特化したテクノロジーを検討している。
企業にはテクノロジーの理解に基づくインフラストラクチャ選定が求められる
現在、ビッグデータ活用は、黎明期からすでに普及期に入っており、活用効果が広く認知されつつある。そのため、これからビッグデータを活用しようとする企業や用途を拡大しようとしている企業は、過度に投資回収リスクの回避を優先するのではなく、積極的に新たなテクノロジーを活用することで、先行する競合他社にキャッチアップすることが可能だ。
たとえば、短期的なリスク回避を重視した選定によって、偏ったテクノロジーの理解を社内に醸成してしまうと、DXエコノミーのフォロワーとなり収益確保が困難になる可能性が高まると考えられる。新しいテクノロジーの採用を検討するためには、企業は自らインフラストラクチャにおけるテクノロジーの動向を注視する必要があるのも事実だ。なお、新たなテクノロジーとしては、ストレージクラスメモリによる「大容量メモリ」や「AIチップ」などがある。
今後、ビッグデータを活用していくユーザー企業には、自発的なテクノロジーの理解に基づくインフラストラクチャの選定が求められる。IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ マーケットアナリストの加藤慎也氏は「ユーザー企業は、DXを実現するため、自社に適したビッグデータインフラストラクチャのテクノロジーを理解すべきである。適材適所にテクノロジーを選定することによって、イノベーションアクセラレーターの活用効果を最大化し、業種や規模を超えて、有力なDXエコノミーの担い手になれる可能性がある」と述べている。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「2017年 ビッグデータインフラストラクチャの技術動向分析」にその詳細が報告されている。