今回の協業により、マイクロソフトのパブリッククラウドプラットフォームMicrosoft AzureとPFNの深層学習テクノロジーの連携を推進し、各業種業態のビジネス課題を解決する深層学習ソリューションを提供するという。協業の日本市場における展開を、日本マイクロソフトが全面的に支援する。
両社は、今回の協業を通して、(1)テクノロジー、(2)人材育成、(3)マーケティング、の3つの軸で連携を進める。
1. テクノロジー
・深層学習に関わる技術者の課題として、複雑化するニューラルネットの学習時間の増大、増加し続けるデータの煩雑な管理、絶え間なく技術革新するアルゴリズムへの対応、深層学習を用いたシステム開発の方法論などが挙げられる。
今回の協業では2017年夏に、Microsoft AzureのIaaSとPFNの深層学習フレームワークChainerの親和性を高め、Chainer/ChainerMN(Multi Node)をワンクリックでAzure IaaS 上に展開する Azure Templateの提供、データサイエンスVMへのChainer搭載、Azure Batch ServicesおよびSQL ServerのChainer対応、そしてChainerのWindows対応などを進めることで、課題の解消を図る。
・現在主流であるニューラルネットワークのスクラッチ開発は高度な技術的知識が求められ、必要とされる投資金額も非常に大きくなっている。深層学習の実社会への適用を推進するためにはスクラッチ開発から、標準化されたソリューションへの移行が必須。
これを推進するため、Microsoft Azureのデータ収集分析サービスとPFNの深層学習プラットフォームDeep Intelligence in-Motion(DIMo:ダイモ)を組み合わせ、特定のワークロードや業種向けソリューションを2017年中に提供する。また、そのソリューションを展開するパートナーを両者で支援し育成を行い、より広い実社会への実装を加速させていく。
2. 人材育成
・データサイエンス人材の育成は深層学習の実社会への応用の主要な課題の1つ。この課題を解消するために両社が連携し、大学の学生、企業内のエンジニア・研究者向けのトレーニングプログラムを2017年中に提供する。また、高等教育機関向けには政府機関などのデータ関連人材育成プログラムへの参加を検討していく。
・トレーニングプログラムはニューラルネットワークの基礎を学ぶ初級クラスだけではなく、実際に深層学習の実ビジネス事例をテーマに応用方法を学ぶ上級クラスまで提供。これらのトレーニングを通して3年間で5万人の人材育成を計画する。国際競争力のある IT人材育成を目的とする世界最大の学生向けのITコンテストであるImagine CupやAzure for Researchなどのプログラムをトレーニングのゴールとして用意する。
3. マーケティング
・深層学習は機械学習の手法の1つだが、現在人工知能という広範な意味を含む言葉に含まれる形で多くの人の目に触れている。その結果、ビジネス課題を解決するために深層学習が有効なのかどうか見極めが難しくなっている。これまでマイクロソフトとPFNが培った深層学習ビジネスの知見および、Microsoft Azure、Chainer、DIMoを活用した実際の成功事例をもとに、2017年夏に各業種に向けたワークショップを開始する。
・Chainer、DIMoが提供する最新の深層学習テクノロジーを、強固なAzure基盤上に組み込むことにより、基幹システムに組み込めるエンタープライズグレードのエンドツーエンドソリューションを2017年中に提供する。
・深層学習でビジネス課題を解決したい企業と、深層学習のコンサルティングや展開を行う企業とのマッチングの場として、コミュニティ”Deep Learning Lab(ディープラーニング・ラボ)”を発足し、6月19日および7月25日の両日、コミュニティの主旨説明会を開催する。
Preferred Networks(東京都千代田区)は、IoTにフォーカスした深層学習技術のビジネス活用を目的に2014年3月に創業。デバイスが生み出す膨大なデータを、ネットワークのエッジで分散協調的に処理する「エッジヘビーコンピューティング」を提唱し、交通システム、製造業、バイオ・ヘルスケアの3つの重点事業領域において、イノベーションの実現を目指している。