産業分野別支出額、中長期的には非金融企業が金融機関を上回る
国内ブロックチェーン関連ソリューション市場の市場規模は今後急速に拡大し、2021年には298億円、2016年~2021年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は133.0%になるとIDCでは予測している。ブロックチェーンは「改ざんできない」「ゼロダウンタイム」などの特徴を持つ分散台帳技術。仮想通貨ビットコインの基盤システムとして生まれ、FinTechの中核技術の1つとして大きな関心を集めてきた。
ブロックチェーンに関連する支出額を産業分野別にみると、多くの金融機関がPoC(Proof of Concept)を行っていることなどから、現在は、金融機関の支出額が非金融企業を上回っている。しかし、今後ブロックチェーンの活用がさまざまな分野へと広がることから、中長期的には非金融企業が金融機関を上回るとIDCでは予測している。ブロックチェーンの主なユースケースとしては、金融の変革のほかに、ポイント/トークン、資産管理、サプライチェーン管理、契約管理、各種認証、当事者間の直接取引などが挙げられる。
たとえば自動車を例にとると、自動車メーカーが自動車製造で使用した部品や製造プロセスをブロックチェーンに記録することによって、販売する車の価値について、より確かな情報を買い手に提供することができる。同様に、車のオーナーが車の利用や修理の履歴をブロックチェーンに記録することで、これを中古車市場で販売する場合に、その価値をより正確に伝えることが可能になる。
ブロックチェーンへの記録行為の一部は、IoT(Internet of Things)によって人手を介さずに行われる。このようなブロックチェーンによる信用できる価値情報の共有は、市場における取引活性化や商品価値向上につながると期待される。
処理速度やスケーラビリティ不足などの課題克服が成長のキーポイント
一方で、ブロックチェーンをビジネス領域に適用するには、まだ多くの課題がある。仮想通貨の基盤技術として生まれたブロックチェーンには、処理速度やスケーラビリティ不足、決済がリアルタイムに確定できない、データを柔軟に扱えないといった機能、性能面での課題があり、これらについて、代替的なアルゴリズムの導入などの取り組みが進んでいる。
また、大規模な運用や長期的なライフサイクルに関する議論が不足していることも課題の1つ。しかし、ブロックチェーンに関する、このような課題の多くは、旺盛なR&D活動や、知見の蓄積によって、今後急速に解決されていくとIDCではみている。
ブロックチェーンは中長期的には、IoT、コグニティブ/AI(Artificial Intelligence)システムと並んで、DXエコノミーやデータ中心社会の中核技術の1つになっていくと考えられる。
IDC Japan コミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの小野陽子氏は「ブロックチェーンは、デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)時代の台帳技術である。ブロックチェーンの活用は、企業の中核システムよりも、周辺システムや新規分野から始まる。ブロックチェーンのメリットを最大限活かせるのが、企業内よりも企業間の情報共有であること、既存システムのブロックチェーンによるリプレースには高いハードルがあること、現段階では処理速度やスケーラビリティが必ずしも十分とは言えないことなどがその理由である」と分析している。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「2017年 国内ブロックチェーン関連ソリューション市場 ビジネス動向:分散アプリケーションプラットフォームの可能性」にその詳細が報告されている。レポートでは、国内ブロックチェーン関連ソリューション市場の市場規模予測と、ブロックチェーンの提供価値、ユースケース、技術的課題、市場動向、ベンダー動向分析などがまとめられている。