DXを具現化する新技術はクラウドを前提に開発されている
国内市場では、ITの導入時にクラウドと従来型ITを同等に評価/検討する「クラウドオルソー」戦略を取る企業が多い状況だが、最近では、クラウドを優先的に検討する「クラウドファースト」へのシフトが見られるようになった。
また、パブリッククラウドサービスのセキュリティについて懸念を抱く企業は多いものの、一方ではセキュリティの強化を期待してパブリッククラウドサービスを利用する企業が増加している。このような動向から、国内パブリッククラウドサービス市場は、高い成長を継続するとIDCは予測している。
国内市場では、デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)への関心が高まっている。そして、DXを具現化するために、オペレーションテクノロジー(OT:Operation Technology)の変革を支援する技術として、「コグニティブ/AI(Artificial Intelligence)システム」「機械学習」「IoT(Internet of Things)プラットフォーム」「ブロックチェーン」などに対する注目が高まっている。
これらの新しい技術はクラウドを前提として開発されており、パブリッククラウドサービスとして提供されることが一般化している。現時点では、これらの新技術に関わる国内パブリッククラウドサービス市場規模は大きくないものの、今後の同市場の成長を促進する大きな要因になるとIDCはみている。
データ流通の本格化はDXを加速し、パブリッククラウドサービス市場の成長を促進
現在、国内市場では「データ流通(あるいはOpen API/Open Data)」に関わる議論が深まっている。すでに、データ流通を促進する法律(改正個人情報保護法、改正銀行法)の施行や、「IoT推進コンソーシアム」「Fintech(Financial technology)協会」などの業界団体からガイドラインなどの情報公開が進んでいる。
データ流通の本格化は、APIエコノミーを具現化し、国内経済にも大きな影響を与えるようになる。APIの整備ではクラウドの活用が一般化しており、パブリッククラウドサービスに対する期待も高まっている。上述した「新技術によるOTの変革」と並んで「データ流通の本格化(APIエコノミー)」は企業のDXを加速し、国内パブリッククラウドサービス市場の成長を促進する。
すでに、多くのパブリッククラウドサービスは、高度なセキュリティ機能を実装している。一方、ユーザー企業が適切にセキュリティ対策を実施しなければ、その効果は得られない。また、DXへの対応を含めて、ユーザー企業にとってセキュリティの強化は複雑となりやすく、さらには、どこまで実施すればよいか分かり難いという課題がある。
IDC Japan ITサービスのリサーチディレクターである松本聡氏は、「国内パブリッククラウドサービス市場は、新たな成長期を迎えようとしている。その成長を牽引するのはDXであり、ユーザー企業がITサプライヤーに求める内容、価値も変化していく。ITサプライヤーは、ユーザー企業が変化するよりも早く自らを変革し、パートナーとしての立場を築くことが重要である」と分析している。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「国内パブリッククラウドサービス市場予測アップデート、2017年~2021年」にその詳細が報告されている。