小売はビッグデータ活用、組立製造はイノベーションアクセラレーター導入が進む
2017年の製造分野の第3のプラットフォームへの支出額は1兆4,219億円で、前年比成長率が7.5%を予測し、流通分野は同9,976億円、同6.4%と予測する。『国内第3のプラットフォーム市場 産業分野別 企業規模別予測、2017年~2021年(2017年5月発行)』で分析したように、国内第3のプラットフォーム市場は、消費者市場を除きすべての産業分野で堅調に拡大を続けるが、なかでも高い前年比成長率で推移し市場拡大を牽引する産業に、製造と小売が含まれる。組立製造の2016年~2021年の年間平均成長率(CAGR: Compound Annual Growth Rate)は8.4%、プロセス製造は7.9%、小売は8.0%であり、堅調な成長率で推移するとみている。
ユーザー企業へのアンケート調査では、ビッグデータの活用について、小売が他の産業分野と比較し突出して高い結果となった。これは、小売は製造と卸売に比べ、顧客である消費者のデータを取得しやすく、購買履歴やモバイルデバイス経由の位置情報やSNSでの口コミなどのデータを、マーケティングや需要予測、店舗開発等の用途で活用が進むことが背景にあるとみている。
なお、イノベーションアクセラレーターのうち、IoT、コグニティブ/AIシステム、AR/VR(Augmented Reality/Virtual Reality)について導入状況を産業分野で比較したところ、組立製造では、いずれのテクノロジーも「導入しておらず、計画もない」と回答した企業が少なく、「導入の有無や状況をまったく把握していない」という回答が最も少ない結果となった。イノベーションアクセラレーターを取り入れることに積極的な産業分野であると言え、組立製造の第3のプラットフォームの市場規模の成長率の高さにも反映されている。
ITベンダーには最適なテクノロジーの助言が求められる
ケーススタディで紹介した2つの企業の取り組みは、業種業態は大きく異なるものの、いくつかの共通点がある。その1つが、これらのケーススタディはLOB(Line of Business)が中心になるものの、IT部門との連携が不可欠である点にある。組立製造のケースはグローバルサプライチェーン推進部門が、小売のケースではEC事業部門がイニシアティブ部門となり、IT部門と連携しデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいる。
IDC Japan ITスペンディングのシニアマーケットアナリストである岩本直子氏は、「ITベンダーはIT部門のパートナーとして、共にプロジェクトを遂行する事業部門や業務部門の課題とビジネス目標を把握し、最適なテクノロジーのアドバイザリー(助言)を行うことが求められる」と述べている。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「2017年 国内の製造/流通分野における第3のプラットフォーム需要動向調査」にその詳細が報告されている。