今年ラリーが選んだライバルはAmazon Web Services
DB Onlineではおなじみチーフキュレーターの谷川耕一氏と、Publickeyの新野淳一氏は実は長い付き合い。同じ出版社で隣接する編集部に所属していたこともあった。そして二人ともにオラクルやOracle OpenWorldを20年ほど見守ってきている。
新野氏は「Publickey」を運営しており、年間で250本ほど記事を投稿している。2017年のオラクルに関する記事はこれまで24本に上る。Oracle OpenWorld(以下、OOW)のような海外イベントだとWeb配信から記事にすることが多く、速報性は群を抜く。2017年2月にアメリカでオラクルがクラウドのライセンス体系変更の発表をした時、日本ではPublickeyから広まったなど影響力がある。
一方、谷川氏はOOWの常連。毎年、オラクルのイベントに合わせて赤く染まるサンフランシスコに足を運び、オラクルの顔となる会長兼CTOのラリー・エリソン氏を自分の目で見続けている。今年のエリソン氏がポロシャツ、ジーンズ、スニーカーというカジュアルな装いだったことを挙げて、谷川氏は「ラリー、若返ってた」と笑う。ちなみにエリソン氏は御年73歳。
OOWは毎年オラクルの新製品や新技術を発表する場だ。主要なテーマは時代とともに移り変わってきた。クラウドはここ3~4年ほど前から登場していたものの、今年は全面的にクラウドを押し出していた。 エリソン氏は基調講演に2度登壇するのが近年の通例。今年の1回目はAutonomous(自律型)データベースクラウドサービス(関連記事:「Oracle OpenWorld 2017が開幕!Oracle Database 18cで自律型データベースクラウドサービス提供へ」)、2回目はセキュリティをテーマ(関連記事:「負け続けているサイバー戦争に勝つためにOracleが考えた自動化のヴィジョン」)に話した。エリソン氏の基調講演といえば、ライバル社を名指してオラクルのほうが優れているとアピールするのが定番。ここからエリソン氏やオラクルが今後何に注力しているのかが浮かび上がる(筆者はエリソン氏なりのリスペクトの表現方法なのだと理解している)。
今年エリソン氏がライバルとして名指ししたのはAWS(Amazon Web Services)。「データベースをクラウドで使うなら、価格も性能もAWSよりオラクルが有利だとアピールしていた」と谷川氏。今年のOOWのテーマが「THE TRANSFORMATIONAL CLOUD」であることからも、それだけオラクルがクラウドサービスに力を入れているのが分かる。
実際にラリー・エリソン氏はAWS(Redshift)からOracle Cloud(Autonomous Database)に移行するなら「利用料金を半額にする」とまで宣言した。新野氏は「Web配信で聞いていて耳を疑った」と当時の驚きを明かす。追い打ちをかけるようにエリソン氏が「契約書に明記する」と述べ、会場からは大きな拍手が沸き起こったという。