データプラットフォームの最新情報が入手できるセミナーを毎月開催
日本マイクロソフトでは毎月、SQL Serverを使用あるいは検討しているユーザー、パートナー企業を対象に「<SQL Server Day>SQL Server丸わかり1日セミナー」を開催している。講師を務めるのは、Microsoft MVP for Data Platformを受賞しているSQL Serverのスペシャリスト、小澤真之氏だ。小澤氏のブログ「SE の雑記」から情報を得ている人も多いだろう。
丸わかり1日セミナーと銘打っているとおり、本セミナーは朝10時に始まり、終了は16時。講義は14時30分あたりまでで、それ以降はパートナー企業によるセッションのほか、小澤氏や日本マイクロソフトの営業担当、さらにはパートナー企業の担当者などが個別に相談を受けてくれる「ブレイクアウト相談会」の時間となっている。つまり、セミナー時間は、お昼休みを除くと3時間40分ほどだ。
とはいえ、最初から最後まで受講するのは時間的に難しいという方もいるだろう。小澤氏は「全部の講義を聴かなくてもまったく構わない。1つだけでも興味を覚えたセッションがあるなら、ぜひ受講してほしい」と語る。
11月28日に開催された「<SQL Server Day> SQL Server丸わかり1日セミナー」のアジェンダは次の通り。
時間帯 | 内容 |
---|---|
10:00〜11:00 | SQL Server 2017新機能概要 |
11:10〜12:10 | Azure SQL Database概要 |
12:10〜13:00 | お昼+MVP小澤氏へのQ&A |
13:00〜13:40 | MS New Technology概要(ML, Ai, Bot) |
13:50〜14:30 | DB(Oracle/Cloud)Migration |
14:30〜15:00 | SQL Server Partner様 Solution紹介 |
15:00〜16:00 | ブレイクアウト相談会 |
講義は4本。午前中に「SQL Server 2017新機能概要」「Azure SQL Database概要」、お昼休みを挟んで午後からは「MS New Technology概要(ML、Ai、Bot)」「DB(Oracle/Cloud) Migration」が解説された。1つの講義は1時間あるいは40分と時間が限られているため、小澤氏は参加者の関心が高いと思われる項目や、今までとは違った利用方法など、トピックを厳選している。説明は細かく詳しく説明するより、キーとなることを次々と伝えることを意識しているという。
「キーとなることだけ伝えれば、後で詳細な資料で調べることができるからです。どこにどういう資料があるかもこのセミナーではすべて紹介するようにしています」(小澤氏)
このような講義なので、必然的にトピックはテンポよく次々と変わっていくので、座学でも退屈せず興味も尽きない。また、渡される資料も充実しており[1]、詳しく知りたいところは後日調べやすいように配慮されているというの、受講者にはもうれしい。
来年2月・3月開催の「SQL Server 丸わかり1日セミナー」に参加してみよう!
2月、3月もすでにSQL Server 丸わかり1日セミナーの実施日は決まっている。最新アップデートのほかに、フォーカストピックとしては2月20日は他社データベースから移行のディープダイブセッション、3月20日はSQL on Linuxのセッションを予定している。講義時間は両日とも13:00~17:30。登録サイトもオープンしているので、今のうちに登録をしておこう。
注
[1]: 参加者がダウンロードできるスライド資料は、「SQL Server 2017新機能概要」のものが62ページ、「Azure SQL Database概要」のものが115ページ、「MS New Technology概要(ML、Ai、Bot)」のものが30ページ、「DB(Oracle/Cloud) Migration」のものが36ページある。
SQL Server 2017新機能紹介はクロスプラットフォーム対応を中心に
最初の講義「SQL Server 2017 新機能概要」では、10月2日にリリースしたSQL Serverの最新バージョン2017の新機能が、ポイントを押さえて解説された。従来バージョンから変わったところも大変わかりやすかった。
SQL Server 2017の特徴を、マイクロソフトでは「INTELLIGENT」「TRUSTED」「FLEXIBLE」という3点に要約しているが、これら3点の中で、この講義で小澤氏が取り上げたのは「FLEXIBLE」。つまり、クロスプラットフォームサポートである。
「SQL ServerというとWindowsというイメージがあるが、最新バージョンではLinuxやDockerコンテナー上でも利用可能になった」と小澤氏。SQL Server on Linuxの紹介では、名前付きインスタンス機能やWindows認証機能など、Linux版ではサポートされていないが知っておくことが重要と思われる項目を解説した。
また、管理ツール「SQL Server Management Studio」(以下、SSMS)から「sp_configure」を呼び出す以外にも、Linux版では「mssql-conf」ツールを使用して各種設定ができることを紹介。そのほか、Linux版における高可用性環境の構築とその例、「可用性グループを使用して、異なるOS間でデータを同期できる」といったことも述べた。
開発ツール「Visual Studio Code」もクロスプラットフォーム対応であるが、このツールはSQL Serverの利用においても役立つ。Visual Studio CodeをLinuxにインストールすれば、sqlcmd/bcpを使用することでコマンドラインからもSQL Serverに接続可能になる。さらに、Visual Studio CodeではSQL Server 2017で実行可能になったPythonを含むSQLの、Python部分を開発することもできる。
そのほか、「Microsoft SQL Operations Studio」というSQLの実行や実行プランの表示が可能なクロスプラットフォーム対応の新しいGUIツールや、今後提供が予定されている「mssql-cli」という新しいコマンドラインツールも紹介された。
「SQL Server on Linuxは、SQL Serverのすべての機能をサポートしていないとはいえ、Windows版と遜色のないほどにデータベースの主要機能をサポートしており、クロスプラットフォームに対応したツールも充実している」と小澤氏。本日はこのことだけでも覚えて帰ってほしいと、特にアピールしていた。
SQL Server 2017で強化された基本機能についてもポイント解説。例えば、SQL Server 2016ではクエリストアが追加されたことで、時系列でクエリの実行状態を取得できるようになったが、「SQL Server 2017では、実行タイミングの処理対象に適合した形で、クエリの実行プランを動的に最適化されるよう改善された」(小澤氏)として、「Batch Mode Memory Grant Feedback(バッチモードメモリ許可フィードバッグ)」「Batch Mode Adaptive Joins(バッチモード適応型結合)」「Interleave Execution(インターリーブ実行)」を紹介。さらに実行プランが変化し実行効率が低下した場合に、過去に実行されたプランから効率のよい実行プランを使用する補正を自動的に行う「自動チューニング」、インデックスの再構築を中断/再開することができる「再開可能なインデックスのオンライン再構築」といった、運用の利便性を向上させる機能などに触れた。
Azure SQL Databaseの概要と運用に役立つTipsを紹介
10分間の休憩の後、次の「Azure SQL Database概要」講義が始まった。Azure SQL DatabaseとはMicrosoft Azure上で稼働するSQL Serverである。
まず、小澤氏はAzure仮想マシン[2]上で稼働する「SQL Server Azure VM」とAzure SQL Databaseとの違いを明らかにした。取り上げたのは、データベースの最大サイズ、基本的なスケーリング方法、更新プログラムの運用である。例えば、データベースの最大サイズは、Azure SQL Databaseでは4TBと決まっている一方、SQL Server Azure VMでは仮想マシンの接続可能なディスクの本数によって異なる。基本的なスケーリング方法もAzure SQL DatabaseとSQL Server Azure VMとでは異なるといい、前者はエディションや価格レベルを変更することで行うが、後者はサイズを変更することで行う。
運用のTipsやコツも教えてくれた。テストで利用したいAzure SQL Databaseは、サービスレベルとして「PremiumRS」(最高レベルの可用性の保証を必要としないI/O集中型のワークロード向け)を選ぶと、利用料金を抑えられるのだという。さらに、エディション(サービスプラン)を選ぶ際には、「性能だけでなく、最大セッション数も考慮して選んでもらいたい」とのことであった。
特に覚えてほしいと注意を促されたのは、Azure SQL Databaseの「更新プログラム」である。
「Azure SQL Databaseでは更新が自動で走るため、常に最新の状態となり、新しい機能をいち早く使用できる一方、データベースサーバーを特定のバージョン(状態)にロックすることはできない。SQL Databaseではデータベース単位で『データベースの互換性レベル』を設定することができるため、バージョンアップによってSQLが影響を受けることはないが、『データベースサーバーについては構築時のバージョンに固定しておく必要がある』というような、要件がある場合には注意しておいてもらいたい」(小澤氏)
なお、SQL Serverの主要機能のうち、Azure SQL DatabaseではWindows認証やUSEステートメントなどをサポートしていない。その一方で、Elastic Database Poolによるリソース共有など、SQL Serverにはない機能を提供している。「柔軟な構成をとれることが、Azure SQL Database最大の強み」と小澤氏は言い切った。
この講義の中ではもう1つ、「Azure SQL Data Warehouse」についても説明があった。Azure SQL Data Warehouseはクラウドベースの並列分散データウェアハウス。「60の非共有ストレージが作成されており、数値上は最大240TBのデータベースサイズ(圧縮してデータを格納することで、実際には240TB以上のデータを格納することが可能)を持つデータウェアハウスが実現する」(小澤氏)のだという。また、Azure SQL Data Warehouseは価格設定もユーザーにとって使いやすいように配慮されている。例えば、コンピューティングとストレージで別々に課金される、使用中のスケールアップ/ダウンが可能、一時停止ができるといったことだ。
Azure SQL Data Warehouseに関してはそのほか、「PolyBase」という高速なデータロード手法が紹介された。
来年2月・3月開催の「SQL Server 丸わかり1日セミナー」に参加してみよう!
2月、3月もすでにSQL Server 丸わかり1日セミナーの実施日は決まっている。最新アップデートのほかに、フォーカストピックとしては2月20日は他社データベースから移行のディープダイブセッション、3月20日はSQL on Linuxのセッションを予定している。講義時間は両日とも13:00~17:30。登録サイトもオープンしているので、今のうちに登録をしておこう。
注
[2]: Azure仮想マシン(Azure Virtual Machine)はマイクロソフトが提供するIaaS。単にMicrosoft Azureという場合はPaaSである。
午後は機械学習/AI機能とDBマイグレーションツールの最新情報
ここで50分間のお昼休み。この時間はランチを取るだけでなく、小澤氏への質問タイムになっていた。何人かの受講者は並んで小澤氏へ質問を行っていた。本セミナーの会場となった日本マイクロソフト品川本社周辺は、ランチを食べる場所に事欠かない。もちろん、お弁当を購入して会場で食べることもできる。小澤氏も会場でランチを取っており、気軽に質問できる雰囲気になっているのも本セミナーの良さだろう。
午後1つめの講義はマイクロソフトのAIテクノロジーについて。「Azure Machine Learning」「Cognitive Service」「Bot」など、手軽に利用できるマイクロソフトのAI関連サービスが解説の中心だ。そのほか、質疑応答を行うBotをコーディングなしで自動生成できるサービス「QnA Maker」や、サービスの活用事例も紹介された。
小澤氏による最後の講義は「SQL Server Migration最新事情」。マイクロソフトは小澤氏が“有効に使ってほしい”というマイグレーションツールを無償で公開している。その一つ「SQL Server Migration Assistant(SSMA)」はAccessやDB2、MySQL、Oracle、Sybase ASEからSQL Serverへの移行に対応。小澤氏はその機能をOracleからの移行デモで披露した。
SQL Serverのアップグレードを支援するツール「Data Migration Assistant(DMA)」もある。SQL Serverアップグレードアドバイザーの後継機能で、SQL ServerからSQL Server(異なるバージョンかAzure VM)またはAzure SQL Databaseへ移行する際のアセスメントと移行が行える。
SQL Serverに移行するメリットを知りたいという人には、Migration Guideというサービスがあることも紹介。「英語のみのサービスだが、これを使うと移行によるビジネス的なメリットや移行手順、移行ツールの情報などを取得できる。ぜひ、活用してほしい」(小澤氏)
また、さまざまなRDBMSからAzure上へデータベースをマイグレーションできる「Azure Database Migration Service(DMS)」も紹介。11月時点のPublic Previewでは、SQL ServerからAzure SQL Databaseへの移行に対応しているのみだが、OracleやMySQL、PostgreSQLなどからの移行も実装予定だという。
「Azure SQL Database Managed Instance」はアプリケーションを変更することなく、SQL ServerのデータベースをAzure上に移行できるという新サービス。「まだPrivate Previewでの提供だが、通常運用でSQL Serverに近いソリューションとなる」(小澤氏)。
来年2月・3月開催の「SQL Server 丸わかり1日セミナー」に参加してみよう!
2月、3月もすでにSQL Server 丸わかり1日セミナーの実施日は決まっている。最新アップデートのほかに、フォーカストピックとしては2月20日は他社データベースから移行のディープダイブセッション、3月20日はSQL on Linuxのセッションを予定している。講義時間は両日とも13:00~17:30。登録サイトもオープンしているので、今のうちに登録をしておこう。
パートナーによるソリューション紹介、さらにはブレイクアウト相談会も
小澤氏による4コマの講義の後は、マイクロソフトのパートナーによるセッションが行われた。ジール社は横浜市のゴミ処理ボットの事例、システムエグゼ社はOracle DatabaseからSQL Serverへの移行事例を紹介。最後に登壇したNECは「Professional Association for SQL Server」という、米国シアトルで開催されたディープなSQL Serverのイベントの話を披露した。
15時からは「ブレイクアウト相談会」が開かれ、小澤氏やマイクロソフト、パートナー企業の担当者に自由に質問・相談できる時間が設けられていた。軽食と飲み物も用意されるなど、ざっくばらんな雰囲気で、気軽に話しかけることができた。
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とにかく盛りだくさんのセミナーである。参加者も「最新情報が取得できるのが良い」「自分一人で調べるより、頭に入る」「小澤氏の話し方が上手い。とにかくお客さまに話すときのヒントになる」と高評価。冒頭でも話したとおり、このセミナーは丸1日いる必要はなく、「気になった講義」だけを受講することもできる。また、以前に参加した人にも役立つように、小澤氏は「常に情報はアップデートし、鮮度の良い情報を伝えるよう心がけている」という。
SQL Server丸わかり1日セミナーは毎月開催されているので、SQL Serverを運用管理している方、Azureで開発をしている方、そしてSQL ServerデータベースをAzureへ移行することを検討している方などは、ぜひ一度、参加してみることをお勧めしたい。