過熱するビットコインとブロックチェーン
ビットコインが高騰と急落を繰り返しながら激しく価格変動している。書店にはビットコイン投資の本が並ぶなど投資銘柄として注目されている。また、ICO(Initial Coin Offering)と呼ばれる仮想通貨による資金調達をめぐるベンチャー企業の動きも一部で盛んになっている。
こうした中、ビットコインを生んだ基盤技術としてのブロックチェーンが、現在どのような状況にあるか、今後どうなるかについて、12月8日に開催された「ブロックチェーン・イノベーション2017」(主催:国際大学GLOCOM)で活発な議論が交わされた。登壇したのは、仮想通貨とブロックチェーンの研究者、仮想通貨事業の経営者、ICO経験の起業家など。今回は基調講演の内容を紹介する。
基調講演を行なったのは国際大学GLOCOMの研究部長の高木聡一郎氏。高木氏は、この間のビットコインをはじめとする仮想通貨の価格の増大による時価総額の急激な変化を示した。
全世界で発行されている仮想通貨は1300種類あり、その発行総額は2800億ドル(約30兆円)、その半分がビットコインだという。最近の報道では、ビットコインの取引は日本が最も多い。国内には相当の額のビットコインが保持されていることになる。
そしてこのビットコインの基盤にあるテクノロジーであるブロックチェーンについて、高木氏は「インターネットの技術の上の価値を交換できる分散型の台帳技術」という定義を語る。
ブロックチェーンはインターネット上の価値(資産)の分散インフラ技術だと理解すると良いと高木氏は語る。そしてビットコインのような暗号通貨はそのデータベースを利用したアプリケーションの一種だ。ブロックチェーンの可能性はこうした暗号通貨以外にも、ソフトウェアが動作するプラットフォームとしても機能する。すなわち「スマートコントラクト」だ。
ブロックチェーンの導入プロジェクトについては、一時期は一般的なデータベースの代わりとして使うなど、「ブロックチェーンを使うこと」が自己目的化されていたが、今は「ブロックチェーンである必要」が問われる。「中央管理者の不要性」、「資産の管理可能性」「改ざん耐性」などのメリットを活かしたシステムをいかに構築していくかだ。
高木氏はイギリス、マンチェスターでの生活保護給付金への暗号通貨利用、スウェーデンでの不動産登記売買:スマートコントラクトによる土地売買・登記システム、会津・若松で行われた地域通貨の実証プロジェクトを紹介した。
合意形成の落とし穴
ブロックチェーンはネットワーク上で、価値を登録して移転させていく仕組みだ。個々の取引や価値の移転は、中央の管理者ではなく、分散して参加する利用者の合意形成によって行なわれる。
ビットコインが成立して以降、この合意が破綻することなく続いてきた。このことが、ビットコインの「成功」の原因だ。しかし、この基盤のブロックチェーンの仕組みをアップデートするやり方については、うまく合意形成が出来ていない。ブロックチェーンの合意形成の時間問題をどのように解決していくかをめぐる方針の違いによって、ビットコインは分裂を繰り返している。
ブロックチェーンの最大の利点ともいえる、決定権のある中央管理者が存在しないというメカニズムが、逆に分裂のリスクを招くという「合意形成の落とし穴」につながっていると、高木氏は指摘する。