入力作業を大幅に効率化、数時間かかっていた業務も数十分で完了可能に
第一弾の開発が完了したのは2018年3月。開発期間は4か月だった。ここで実現されたのが、Azure上のしくみと既存の契約業務システムとの連携である。これはWeb Apps上のアプリケーションに顧客情報や契約内容を入力することで、既存の料飲店データベースや契約情報データベースに、それらの情報が自動的に格納されるというもの。クライアントとしてはPCのほかスマートフォンも利用でき、稟議に必要な書類をMicrosoft Excelから転送することも可能だ。
顧客情報で文字入力が必要な項目は、顧客名や電話番号など、最小限に抑えられている。住所は地図アプリで場所を選択するだけで自動的に入力され、GPS機能で現在地を指定するだけでも入力可能。また必要な書類もあらかじめ用意された選択肢を選ぶだけで、自動的に作成されるようになっている。
「2018年3月から約100名を対象にしたテスト展開を行いましたが、入力が簡単で重複入力も不要になったことをデモを交えながら説明したところ、大きな歓声が上がりました」と水戸氏。稟議書類の作成も、以前は雛形を見つけ出して変更が必要な箇所を営業担当者の手で書き換えていたが、新システムではその必要もなくなった。そのため書類作成のミス発生も必要最低限に抑えられ、社内回覧時に関連部署からストップがかかることもなくなったという。「今まで数時間かかっていた業務がわずか数十分程度で完了するようになりました。スマートフォンでも入力が行えるため、外出先でのちょっとした隙間時間や移動時間も有効に活用できます」
2018年4月には全国展開を開始。これによって営業担当者の内勤業務が大幅に効率化され、入力内容の抜けや漏れもなくなると期待されている。今回は統合の対象外となった他の既存システムも、今後段階的に統合していく計画だ。次のターゲットとしては、料飲店の詳細情報を管理するシステムや、営業活動記録システムが挙げられている。すべての営業基幹システムの統合は、2019年度末を予定している。
「このようなシステムを活用して内勤時間を削減することで、営業が本来行うべき得意先回訪や販路拡大、アサヒビールファン化工作に専念できるようになります」と福岡氏。またワークライフバランスや将来の自分の投資など、働き方改革の実現も可能になるだろうという。「効率的かつ効果的な攻めの営業スタイルと、社員が活き活きと働ける組織風土の醸成につながるものと期待しています」。
アサヒビールが採用したこのようなアプローチは、社内業務の効率化や働き方改革にとどまらず、デジタル変革で新規ビジネスを展開するケースにも適用できるはずだ。SoEを載せてモダナイゼーションを行えば、古いスタイルのシステムも新たな資産へと変貌する。このような手法でシステム刷新を推進する企業は、これからさらに増えていくのではないだろうか。