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体験を作る、エクスペリエンス・メーカーたち―NFL ヒューストン・テキサンズ J.J.ワット氏の場合

 今回のAdobe Summitで、新たなキーワードとなっているのが「Experience Maker(体験を作る人)」だ。イベント2日目の基調講演では「Experience Maker All-Star」と題して、エクスペリエンス・メーカーを牽引するさまざまなリーダーがゲストとして登場した。

SNSなどのデジタルなプラットフォームをうまく活かしてエクスペリエンス・メーカーになる

ヒューストン・テキサンズに所属するディフェンス・エンド J.J.ワット氏
ヒューストン・テキサンズに所属するディフェンス・エンド
J.J.ワット氏

 アメリカンフットボールNFLのヒューストン・テキサンズに所属するディフェンス・エンド J.J.ワット氏は、「NFLディフェンシブ・オブ・ザ・イヤー」を3度も獲得した優秀な選手だ。さらにワット氏は、アメリカンフットボールの選手としてフィールドで活躍するだけでなく、2017年にはフィールド外でもエクスペリエンス・メーカーとして活躍したことで、NFLプレイヤーのチャリティー活動に関する年間の最優秀賞である「ウォルター・ペイトン・マン・オブ・ザ・イヤー」も獲得した。

 彼がウォルター・ペイトン・マンを獲得するきっかけとなったのが、彼が所属する的サンズの本拠地であるヒューストンを襲ったハリケーン・Harvey(ハービー)の影響による甚大な洪水被害だ。ハービーにより100名以上の死者が出ており、数十万の家屋を冠水させ3万人以上の被災者が発生した。

 ヒューストンをハリケーンが襲った際にワット氏は、デンバーでトレーニングを行っていた。ハリケーンの被害を知りヒューストンに戻ろうとしたけれども、街は洪水に覆われておりすぐには戻ることはできなかった。「自分が、毎日運転する道が洪水になっていました。テレビで人々が助け合っている映像を見るだけで、自分では何もできなかったのです」とワット氏。

 フットボール選手である自分を応援してくれた人や、助けてくれた人が被災者になっていた。しかし、自分は助けに行くことすらできない。何かできないかと考え、思い付いたのがSNSの活用だった。SNSを通じて被災者のための寄付を募ることにしたのだ。まずは20万ドルの金額を集めることを目標に設定し、ワット氏自身が10万ドルを寄付し募金を募ることにした。そして本の19日間で目標の20万ドルを達成することができ、さらにそれ以降も募金は集まり続け、最終的には3,700万ドルもの募金が集まったのだ。

 「これで被災者を助けることができました。最終的には20万人が募金に参加してくれ、その中にはセレブの人もいれば、高校のフットボールコーチや生徒が小遣いを寄付したいとも言ってくれました。もちろん米国だけではなく、世界中から支援がありました。多くの人々が、人道的なことをしたいと思っているのです。けれど、そのためにどこに行ったら良いかが分からないのです」(ワット氏)

 どこに行って何をすれば良いかを、ワット氏はSNSを使って伝えたのだ。

 「これは、私が賞賛されることではありません。私は救済のための機会を提供しただけです。被災している状況を伝えるニュースを見ていると不安になることもあるでしょう。そのような中、さまざまな人が募金活動に参加してくれた。良いことをするためのプラットフォームがあれば、良い世界が生まれるのです」(ワット氏)。

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行動を起こすためにデジタルプラットフォームを活用する

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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