ソフトウェア・デファインド・ストレージのDell EMC VxFlex OSでデータベースのモダナイズを実現する
従来のアプリケーションであれば、サーバーやネットワークスイッチなどのインフラがあれば十分でした。一方デジタル変革では、モバイル対応やマイクロサービス・アーキテクチャも必要です。何千ものコンテナを動かすような新しいITインフラが必要になります」(クーマー氏)
モバイルに対応し何千ものコンテナ運用を容易に行うには、コンピューティングやストレージ、さらにネットワークのあり方を変えなければならない。ITインフラを最新化し、それにより新たなビジネスの価値を得られるようにする。このITインフラの最新化のアプローチとしては、まずはフラッシュストレージの活用がある。2つめにはスケールアウト型のアーキテクチャにすること、3つめにはソフトウェア・デファインドの柔軟な仕組みも必要だ。
4つめは顧客のデータセンターのクラウド化支援だ。これはリソースを抽象化し、従量課金の形で利用できるようにすることも含まれる。そして5つめで必要になるのがセキュリティだ。「データなどデジタル世界での安全性だけでなく、カメラなどによる物理的な監視も含め考える必要があります」と指摘する。
6つめに必要となるのが、AIや機械学習などの新しい技術だ。Dell EMCでは既にあらゆる製品に機械学習技術を組み込む方針を打ち立てている。「自己学習してさまざまなことを予見します。そしてマシン同士がコミュニケーションをとって、自動で最適な動きをするようになります。ストレージ装置を効率よく冷却すると言ったところでも機械学習の技術が活用されています」とクーマー氏は説明する。
これら6つの側面からアプローチし、データセンターを最新化する。その活動の中で特にOracle Databaseのインフラをモダナイズするのが、Dell EMC Oracle Solution Architectのグラハム・ソーントン氏の役割だ。Oracle Databaseのインフラのモダナイズで、まず活用すべきなのがフラッシュストレージ。さらにインフラをスケールアウト型にするのも効果的だ。これらのためには、ソフトウェア・デファインド型のストレージの活用が有効だ。
ところで、Oracleのユーザーで組織IOUG(The Independent Oracle Users Group)の調査では、Oracleのデータベース管理者(DBA)にとって重要なのは、Oracleの管理の時間とコストを下げ浮いた分の時間をその他の重要なことに当てることだとの回答が66%あった。
DBAには、データベースの性能を維持する責任がある。それに日々の時間をとられているのだ。「Oracleの処理が速すぎて困るとの話は聞いたことがありません。チューニングには多くの時間が割かれています」とソーントン氏。他にもDBAはワークロードを障害から守り、ルーチンワーク的な仕事は自動化したい。これらの実現に貢献しているのが、進化を続けているOracle Databaseだ。
「Oracle Databaseは、リレーショナルデータベースでは世界でNo1です。Microsoft SQL Serverも良くなっていますが、まだ追いついていません。しかしOracleは良いものですが、安くはりません。本体ライセンスにオプションまで入れると、かなり高額です」(ソーントン氏)
特にCPUコア数が多い環境で利用していると、性能の割にはライセンスコストがかなり高額になることがある。Oracle Real Application Clusters構成をとっていれば、さらにライセンス費用は膨れ上がる。
Dell EMCとしては、このOracle Databaseのライセンス費用が嵩む課題をソフトウェア・デファインド・ストレージ技術を活用するVxFlex OS(旧Scale IO)で解決する。たとえばDell EMC VxFlex R630 Ready Nodeを6台使うクラスター構成を例に考えるとする。R630は一世代前のモデルだが、CPUは1ノード2ソケットで14コアあり、763ギガバイトのメモリが搭載できる。ノードごとに1.7テラバイトのSSDが搭載され、各ノードに搭載されているSSDをVxFlex OSを使って1つの大きなプールにできる。そこからOracle Databasesで利用するのに必要なLUN(Logical Unit Number)を、柔軟に切り出せる。
6ノードのうち4ノードをOracle RAC構成にし、残りの2ノードはそれぞれシングルサーバーで利用するといった構成も可能。こういった構成にしても、各データベースの処理が、影響を及ぼし合うことはない。VxFlex Ready Nodeは汎用サーバーであり、1ノードに10ギガビットネットワークカードが4枚搭載されているところが少し異なる。最新のものであれば、さらに高速な25ギガビットのネットワークカードも選べる。4枚のネットワークカードのうち2枚はVxFlex OSの処理で利用し、残りをOracle RACの通信に使うのだ。
VxFlex OSは、Oracle Databaseと同じノードで動く。そうなるとVxFlex OSがCPUリソースを消費し、データベースの処理が遅くなるとの懸念も出る。しかし、1つのノードで双方を動かしても「平均すると65%程度がCPUアイドルの状態で動きます。つまりVxFlex OSの負荷は大きくないのです」とソーントン氏。こういった負荷状況はデータの読み込みだけでなく書き込みでも変わらない。一方でネットワーク帯域は10ギガビットでは飽和状態になるので、最新の25ギガビットへの拡張は性能向上に大きく寄与することになる。
「R630のVxFlex Ready Nodeのソフトウェア・デファインド・ストレージ構成で、ミッドレンジのフラッシュストレージよりも速いくらいです」(ソーントン氏)
VxFlex OSでソフトウェア・デファインド・ストレージを活用するのは難しくはない。専用管理画面を使うことでGUIで容易に設定でき、スナップショットの取得も簡単だ。またRESTful API経由でも操作でき、スナップショットでクローンを作り、そこからリカバリーしてストレージをリネームしてマウントし直すなどの処理をスクリプト化し自動実行することも可能だ。「ハイエンドストレージで実施するような高度なストレージ管理も、VxFlex OSで実現できます」とソーントン氏。VxFlex OSを利用する際に、Oracle Databaseの機能を制限するものはない。Oracle Automatic Storage Managementの機能も問題なく利用できる。