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クラウド、デジタル、働き方改革のスペシャリストがセキュリティについて語り合う

edited by Security Online   2018/10/04 06:00

他社事例に弱い日本企業、一番ピンが倒れると、周囲が続けて倒れる

原子:クラウドはうまく使えばいいのですが、例えば1万人も社員がいる企業だと、誰かが何か起こしたりします。それでルールが厳しくなりがち。

沢渡:コーポレートポリシーは難しい話ですね。性善説に立つか性悪説に立つか。例えば、さくらインターネットでは「さぶりこ」という働き方改革のパッケージを社内展開しています。これは社員を信頼する「性善説」に立ったといいます。これからは、エンゲージメント重視の時代。これは「愛社精神」や「所属意識」とも言い換えられて、人は信頼されるとその組織へのエンゲージメントを高めるという調査結果もあります。性善説に立ったマネジメントで不正を起こさせない。これは採用にも関わってきます。逆に不平不満があると、Twitterに書かれてしまいます。そんなコーポレートリスクもある時代です。いかにいいサイクルをいかに作っていくかが大事です。

原子:聞いた範囲だと、経営サイドの腰が重いようですね。

友岡:クラウドを推進する人はリスクを背負っていると考えています。もし何かあれば、それがクラウドに起因しなくても「ほら、見たことか」と。クラウドに行く途中で失点してしまうと難しい。あとクラウドに「行く」という意思決定を誰ができるか。うちは常務でCIOのぼくが「リスクを取る」と言うのでみんなが走れます。もし役員が「おれはあと2年で退職だから問題を起こしてくれるな。新しいことをするな」と言うような人だと、誰も走れなくなります。

沢渡:古い仕事のやり方を塩漬けにすると、残念な結果しか生まれません。これからはコラボレーションの時代ですから、外のイケてる人たちと仕事ができないことはリスクです。会社が買収され、突然、転職活動をすることになるかもしれません。70歳を過ぎても働く時代に、自分は再雇用される人材になれるか考えたほうがいいと思います。上司がIT音痴なのは百歩譲って仕方がないとしても、せめて上司は部下の成長を阻害しないでほしいですね。

茂岩:経営の話が出たので私からも。経営には「それを使わないと競争に負けますよ。競合はここまでしてますよ」と伝えなくてはならない時もあると思います。きちんと伝えれば前向きに考えてもらえます。危険なものというのは、使い方を間違えるから危険なのです。どんなものを使おうが 、正しい使い方をすれば一定の安全性に達することができます。

原子:「やれ」と言われてやるIT部門ではダメですね。

沢渡:日本は他社事例に弱いですから。

原子:でも出したがらない。

友岡:AWSユーザー会では、大手銀行がプレスリリースを出したら参加企業が一気に増えました。金融部会もできてしまいました。一番ピンが倒れると、周囲が続けて倒れます。

企業同士でベストプラクティスを共有し、みんながハッピーに

原子:まとめに入ります。セキュリティの運用現場についてもっと掘り下げたかったですが、時間が足りませんでした。クラウドやデジタルの活用は恐れずチャレンジしてほしいですが、会社の環境や信頼関係が複雑に絡み合うので難しいですね。それぞれ一言ずつお願いします。

茂岩:本日一貫して申しあげてきたのは「クラウドは危なくない。正しく使うのが大事」です。あと山のようにあるサービスをそれぞれ調べたら大変なので、JAWSのようにユーザー企業同士でベストプラクティスを共有できるといいですね。みんなハッピーになます。

友岡:ぼくはセキュリティベンダーに文句を言いたい。コンポーネントが多すぎ。エンドポイントセキュリティ、監視、スマホやデバイスの管理、「振る舞いの検知はまた別です」とか。いったい何個買わせるのか。底なし沼です。こうしたなか、自分の事業のリスクとお金の妥当性はそれぞれ企業の成熟度や理解度などを加味して、「いい塩梅」で決めるしかありません。他人を見て羨ましいと思うのはよくないですよ。

沢渡:時代の潮流をうまく利用しましょう。「働き方改革」や「コラボレーション」はいまや時代のマネジメントキーワードです。その文脈で、経営あるいは客先にITやセキュリティに投資してもらう。そのためには情報システム部門単独で騒いでもうまくいかなくて、働き方改革の旗振り組織である人事部や総務部、あるいは広報部門を味方につける。こういった、組織の壁を越えた働きかけも重要です。「ダイバーシティ」もパワーワードですね。コラボレーションを阻害するような、旧態依然とした職場環境やIT環境では多様性は活用できません。ダイバーシティは「ごっこ遊び」で終わってしまいます。「ダイバーシティごっこ」から卒業するためにも、最新のITを正しく活用していきましょう。

原子:久しぶりなのでまたみなさんと飲みたいですね。寒くなってきたから熱燗がいいかな。行きは車で運転して、夜はバーに車を横付けして、飲んだら自動運転で帰る。そんな未来が作れるといいなと思います。みなさん今日はどうもありがとうございました。



著者プロフィール

  • Security Online編集部(セキュリティ オンライン ヘンシュウブ)

    Security Online編集部 翔泳社 EnterpriseZine(EZ)が提供する企業セキュリティ専門メディア「Security Online」編集部です。デジタル時代を支える企業の情報セキュリティとプライバシー分野の最新動向を取材しています。皆様からのセキュリティ情報をお待ちしております。

  • 加山 恵美(カヤマ エミ)

    EnterpriseZine/Security Online キュレーター フリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。 Webサイト:http://emiekayama.net

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