様々な業界でデジタル・ディスラプターの影響力が拡大
「ポスト2020」にどのような変化が起きるのか。IT分野に特化したリサーチ&コンサルティングサービスを展開している株式会社アイ・ティ・アール(以下、ITR)では、ポスト2020に向けて企業が注目すべきIT動向と未来仮説について「ITR注目トレンド 〜ポスト2020の仮説〜」と題して発表し、小冊子にまとめている。同社アナリストの調査・分析に基づき、IT業界、テクノロジー、ユーザー企業の3分野における変化を10項目にわたって予測し仮説としたものだ。その中から、特に注目すべきという3項目が分野ごとに紹介された。
まずIT業界について「メガクラウドの席巻」「大型開発案件の減少」「一般企業のITプロバイダー化」があげられた。その中で内山氏は「一般企業のITプロバイダー化」に着目しているという。これは決して、一般企業がITベンダーとなることではない。デジタル技術を活用した新規事業を開拓しようとするユーザー企業が、本業の強みを生かしてクラウドサービスやプラットフォームビジネスを展開し、収益をあげていく。一般企業がサービスプロバイダーとなることを指向することで、ITベンダーとの境界が曖昧になっていくという予測だ。
そしてデジタルについては、「マルチクラウドとサーバレスの拡大」「SoRへのアジャイル/DevOps適用拡大」「AI技術のコモディティ化の進展」が紹介された。ここでは内山氏は「AI技術のコモディティ化の進展」をピックアップして「今後ますます技術が進化すれば、AIはミドルウェアや機器、インフラといったもののなかに組み込まれて提供されたり、『as a Service』として提供されたりするようになる」と説明し、“特別な存在”ではなくなることを強調した。
そして3つめのユーザー企業についても、様々な取り組みが既にスタートしていることを指摘した。たとえば、「デジタル人材を巡る争奪戦の激化」としてデジタル人材を集め、育てるという動き。そしてIT投資の考え方をROI一辺倒から、多少のリスクを取りつつ長期的視点に立ったチャレンジングな取り組みとしてみなす「段階的なプロジェクト投資」。さらにはAIやソフトウェアロボティックスの活用を含む業務・仕事の見直しによる人材の高度活用を促進するという「AI/ロボットによる業務変革の進展」なども顕著だという。
それらを踏まえて、内山氏は「様々な業界でデジタル・ディスラプター(創造的破壊者)の影響が大きくなりつつある」と語る。「破壊的イノベーションが起き、既存の業界が大きなダメージを受ける」という現象だが、少し前までは米国や一部業界の話として認識されていたものの、いまや日本でもUberやAmazonのような例が様々な業界で起きつつあるという。
たとえば、アパレルの業界では、ZOZOTOWNのようにZOZOスーツを配布して店に行かずして採寸を行ない、体にあった服を手に入れられるというようなサービスがスタートしている。そして既存業界側でも対抗するかのように、紳士服のアオキでは月額制でのスーツレンタル「suitsbox」(スーツボックス)を展開し、レナウンでも同様の「着ルダケサービス」を開始しており、いずれも好評を博している。