「日本にはRPA普及のポテンシャルがある」とし、2017年11月から日本市場での製品普及に注力しているBlue Prism。このたびBlue Prism DXの提供開始に合わせて来日した、Blue Prismグループでアジア太平洋地域CTO(最高技術責任者)を務めるダン テルヌ(Dan Ternes)氏に、Blue Prism DXのねらいを聞いた。
これまでのRPAには脳がなかった
政府が推進する「働き方改革の推進」を背景に、日本におけるPRA市場は活況を呈している。労働人口が減少していく中、少ない労働力で生産性と競争力を維持するためには、RPAによる業務の自動化は必須と考える企業は少なくない。
公益財団法人日本生産性本部が公開した「労働生産性の国際比較 2017年版」によると、2016年の日本の時間当たり労働生産性は46ドルで、OECD加盟35カ国中20位。主要先進7カ国の中では最下位だ。RPAはこうした課題の解決手法として注目されている。
ただし、RPAの運用には課題もある。その1つが機能拡充だ。AIなどの最新技術を短時間で効率的に導入するためには、最小限の開発コストと期間で作業する必要がある。
「Blue Prism DXはそうした課題を解決する。Blue Prism DXの優位性は、デジタルワーカー(オフィスワーカー)が持つ(経験と知見から得られた)“スキル”を発見し、その利用を促進するものだ」とダン氏は強調する。
同社製品の最新版である「Blue Prism v6.4」では、Blue Prism DXのほか、ビジネスプロセスの自動分析機能やREST(Representational State Transfer)サービス向けWeb APIを実装している。オープンAPIを通じて、AIなどの機能を必要に応じてすぐに実行できるのが同社製品の強みだ。AIやMLなどの機能は、既存のRPAの適用範囲を拡張するとダン氏は説明する。
「これまでオフィスワーカーの作業は、たとえそれが単純作業であっても人間がやっていた。その背景には、複数のアプリケーションを立ち上げて作業をしたり、手書き文書を読み込んだりする必要があったからだ。しかし、AIを活用すれば、こうした作業を自動化し、これまでの知見を加味した作業自動化プログラム実行できる」(ダン氏)
同氏は、「人体にたとえるなら、既存のRPAは手・足の作業を代行するものだった」と指摘する。これに対してAIやMLは、パターンを特定する「頭脳」であり、手書き文書や写真を認識する「目」の役割を担う。さらに、音声認識技術とAIを組み合わせれば、インタラクティブなやり取りをする「口」や、相手の感情を理解する「耳」となり得るというわけだ。
たとえば、「手書き文書をOCRで読み込み、業務用アプリに自動入力する」といった作業を自動化できれば、金融や保険などの申し込み手続きに関わる作業も大幅に効率化できる。さらに、AIによるコンテキスト(文脈)の分析やデータ解析技術を組み合わせれば、人間による「判断」が必要な作業でも自動化が可能になる。
ダン氏は、「特に感情分析は、今後のRPAに重要な要素の1つになる」と指摘する。単に文脈を理解するのではなく、顧客の感情を推測して適切に対応するニーズは多い。コールセンターなどのバックオフィスではRPAの導入が進んでいるが、顧客からの問合せ内容もAIで分析できれば、その作業効率は大幅にさせられるという。