心得1.負けず嫌いであること―「人がやっていないことをやりたい」
大学時代、理工学部で光ファイバーの研究をしていた。当時の研究では、ポリマーから光ファイバーそのものを作るところから取り組んでいた。一方で、PCなどの扱いはあまり得意ではなく、大学4年生になるまでレポートは手書きだったりも。
当時の研究対象は光通信ネットワークのいわゆる物理層部分。同じネットワーク関連ということで、研究室からは就職先としてシスコなどを目指す人もいた。一方で武吉さんの興味はもっと上のレイヤ、つまりは人に近いところだった。そこで就職先としては、業務アプリケーションなどもあり幅が広いオラクルを選ぶことに。「ヨットをやっていたので、ラリーのことは知っていました」と武吉さん。オラクルについては社員犬がいる赤いイメージの会社で、創業者のラリー・エリソン氏が強力なリーダーシップで牽引するイメージもあったと振り返る。
当時、オラクルに新卒で就職するのは情報系の学部出身者で、既にITに関しかなり詳しい人間ばかりだろうと思っていた。自分はそうではない。とはいえ、そういった人たちに負けたくない。そこで無事に内定をもらってから入社までにかなり頑張って勉強をしてORACLE MASTER Gold Oracle Database 10g、さらにはORACLE MASTER Gold Oracle PL/SQL Developerの資格を取得した。これらを取得しようと思ったのには、会社に入ってからなるべくやりたいことをできるようにするためでもあった。
武吉さんがオラクルに入社したのは2009年、ちょうどSun Microsystemsを買収しOracle ExadataのV2が出た頃だった。「Exadataならハードウェアからデータベースまでできて面白そうだ」と考え、Exadataで1人前になれば社内でも早く認知され、自身のプレゼンスを高められるのではとも思った。
「自分は滅茶苦茶負けず嫌いなんです。人と同じことはやりたくありません。その分野で10年経験しているような人がいれば、その人にはなかなか追いつけません。既にある1を2にするようなことではなく、ゼロから1のところをやりたい。そのほうが楽しいです」(武吉さん)
無事に社内で希望も通り、Oracle Exadataの導入から運用のサポートまでを行う仕事に早速就くことに。2年ほどそこで頑張って仕事をした際に、サポートエンジニア経験のある先輩には敵わないことを実感する。この仕事は、単に技術に詳しいだけではダメだと気付かされるのだ。「その先輩は技術的に詳しいだけでなく、経営層クラスへの顧客対応も完璧でした」。経営層の人たちの対応をする際には、データベースの話は一切せずにビジネスの話をしなければならない。技術があっても技術でごり押しをしない。Oracle Exadataを扱うエンジニアであっても、会社経営の視点を持つべきだとここで気付くことになるのだ。