RPAは海外よりも日本が先行する珍しいソリューション
ガートナーではRPAを「ユーザー・インタフェース(UI)上の操作を認識する技術とワークフローの実行を組み合わせることで、人間が各種アプリケーション上で実行する『手作業』を模倣し、各種アプリケーションを介して、システム間で構造化データを自動的に移動・入力するよう設計されたソフトウェアの総称」と定義している。つまりは人が行うPCでの作業を模倣し、データを受け渡してアプリケーションを連携させ、業務を自動化するものと言えるだろう。
このRPAは少子高齢化、労働人口の減少に悩む日本において、その課題を解決し働き方改革を実現するソリューションとして、2017年頃から大きく注目を集めている。ガートナーの新しいテクノロジの未来を予測するハイプサイクルにおいても、RPAは2018年時点で既に「『過度な期待』のピーク期にあります」とアナリストの阿部恵史氏は言う。RPAは、ハイプサイクルを進む速度が他の技術よりもかなり速いのも特徴だ。
多くのITソリューションの活用は、日本よりも欧米で先行しているが、RPAは海外よりも日本が進んでいる。海外のアナリストと阿部氏が会話した印象からも、「RPAはアジアではオーストラリアなどで採用が増えているが、日本はその中でも先行していると感じている」とのことだ。
1990年代には外資系ベンダーのソフトウェアビジネスは、日本の売り上げ規模がグローバルの10%程度を占めることも珍しくなかった。現状のRPAの日本市場は、その頃によく似ている。最近になり一気に日本のビジネスを拡大しているUiPathなどは、「売上比率はそこまで高くないかもしれないが、導入社数はグローバルの3割程度を日本が占めるのでは」と阿部氏は予測する。他の外資系ソフトウェアベンダーの多くは、日本市場の規模が最近ではグローバルの1桁%程度しかない。この状況からすると、これはかなり大きな違いだ。結果としてRPAベンダーは、日本市場からの要望を無視できない状況にもなっている。
もともとRPAは、オフショアなどのビジネスアウトソーシングを行っていたインド企業などで、請け負った業務を効率的に回すために生まれた。そのためクラウドやコンテナなどの先端技術の1つと捉えるのではなく、業務に紐付いたテクノロジとして捉えられている。
なぜRPAは、日本でここまで受け入れられたのか
日本は古くから、紙ベースの業務作業が多い。そこに働き方改革が登場したことで、ビジネスコンサルタントなどは経営層に対し、日本の業務現場の課題解決にこそRPAが役立つと提案するようになった。経営層も先端テクノロジの話より、業務に結びついた技術であるRPAは理解がしやすいのだ。結果的に「RPAは夢のある話として経営層に響いたのです。そこから検討してPoCを行うパターンも多くありました」と阿部氏は言う。これが同じ業務効率化の話でももっと技術的に複雑なものであったなら、ここまで日本で受け入れられることはなかっただろう。
このような背景もあり、RPAの導入検討はトップダウンで実施されるものが多かった。そしてPoCを行うと、業務の中で自動化できることとできないことが明確化する。導入効果がはっきりせずグレーゾーンが大きい先端技術のソリューションと違う点だ。
「RPAは、やってみればその効果が分かります。情報システム部門も理解でき、支援がしやすいと受け止めます。これがコンテナだマイクロサービスだとなると、PoCをやってもそう簡単にメリットなりを理解ができないのです」(阿部氏)