データガバナンスとは
川上氏はデータガバナンスについて、「企業のデータ活用戦略、目標、ポリシーを確立するための組織的な枠組み」と定義した。「データガバナンスをひとつください」という問い合わせを受けたこともあるというが、データガバナンスはソフトウェアの導入やシステムの構築で終わるものではなく、組織的な取り組みや枠組みを作ることであるとした。また、データガバナンスの推進における重要なキーワードとして、「網羅性」と「実用性」を挙げた。この相反する2つの要素のバランスが大事としている。
データガバナンスの取り組みをうまく進めていくと、データのありかがまず整理される。また、データ自体の信頼性も上がっていく。結果としてデータの活用の幅が広がり、より信頼度の高い分析結果が得られ、より高いビジネスバリューを生み出していくことにつながる。縛ることや管理することだけでなく、データの活用を促進できる仕組みであることを、まず理解すべきとした。
続いて川上氏は、データガバナンスの失敗要因を紹介した。これには「組織・体制」「認識」「効果」「リソース」の4つが挙げられる。「組織・体制」では、ワーキンググループや実行委員会など、組織が細かく分断されていて折衝、調整がたびたび必要になったり、業務とITの連携がうまくいっていないケースを例に挙げた。「認識」では、たとえば業務部門や責任者がデータガバナンスを正しく認識していないケースがある。これでは組織全体で取り組むことはできない。
「効果」は、効果が見えないというもの。データガバナンスを実現するには、組織に手を入れたりシステムソフトウェアの更新をしたりするので、投資対効果を問われてしまうケースだ。このようなケースは、データガバナンスを入れることが目的になっていると川上氏は指摘する。大切なことは、データガバナンスにより整理されたデータで何をするのかということであり、データガバナンスが利益に直結するケースは非常に少ない。「リソース」は主に人的リソースの問題で、川上氏は専任の担当者をきちんとアサインすることが重要であるとした。