4年間で75%の電力削減に成功したシュナイダーのDX
シュナイダーは従来の「重電・産業用電気機材提供企業」というイメージから脱却するため2019年初頭、「IT事業部」を「セキュアパワー事業部」に名称変更し、包括的なエネルギー管理を手掛ける事業部門とした。革新的なエネルギーDXに取り組む同社は今後、自社イメージをどのように“トランスフォーム”していくのだろうか――。
――重電・産業用電気機器であるシュナイダーのDX戦略について教えてください。多くのIT企業がDXの必要性を訴えていますが、他社が提唱するDXとの違いはありますか。
レオン氏:シュナイダーが主張するDXは、デジタル化でエネルギー効率を高め、自動化によって作業・運用を最適化することです。シュナイダーの製品は、工場やホテル、公共施設など電力消費の多い分野で利用されています。同分野でエネルギーのDXが進めば、われわれの製品を導入している顧客企業だけでなく、一般の施設利用者や消費者、ひいては地球環境にも大きなメリットがあると考えています。
今後、新興国でIT化が加速すれば、世界の電気需要は一気に増加しますよね。現在の電力効率のままこれらの需要を満たそうとすれば、CO2排出量増加による地球温暖化など、課題が山積するでしょう。しかし、電力を効果的に利用すれば、需要を満たしながら消費量全体は削減できます。これはDXなしでは不可能です。さらに、現在はDXを実現する技術やソリューションが整っています。
――シュナイダーは独自のIoTプラットフォーム「EcoStruxure(エコストラクチャ)」を提供しています。EcoStruxureはDXにどのような役割を果たすのでしょうか。
レオン氏:EcoStruxureは、IoTに関連するソフトウェアやサービスをクラウドベースで提供するプラットフォームです。EcoStruxureに接続するすべての機器からデータを収集し、稼働状況や電力管理、そして効率的な運用を実現します。安全かつ効率的で安定的な電力供給を支えることはもちろんですが、さらに「効率的な運用」の観点から分析やセキュリティといった機能も提供しています。これらもDXには欠かせないものです。
――シュナイダーがDXで実際に効果を上げている具体的事例はありますか。
レオン氏:フランス本社では、DXにより4年間で75%の電力削減に成功しました。もちろん、従業員の作業効率は維持したままです。従業員一人に必要なオフィスの電力を考えてください。現在は部屋にいる従業員の数に合わせて空調を調節したり、センサーなどを活用して人がいない場所の電気を自動で消したりできるようになりましたよね。
こうした施策に関するデータをすべて収集して分析し、改善を繰り返すことで、さらなる効率化を推進できるのです。われわれは自社の事例をお客様と共有し、その有用性を説いています。実際、シュナイダーにはデジタル化に特化したサービスエンジニアがいます。彼らは各業界のドメイン知識を活かし、顧客の環境に最適なデジタル移行やモニタリング、プランニングなどを担っています。