SIベンダにリスクを持ってもらう方法もある
では、ユーザはどうすべきだったのでしょうか。勿論、要件定義後のカスタマイズ費用増大を見越して、きちんとした契約を結んでおくべきだったわけですが問題はその内容です。
一番シンプルなのは、契約書において、これはシステム開発全体の契約であり、最終的にシステムが納入されない限りは、パッケージのライセンス料も要件定義費用も払わないと、契約書の条文で謳うことでしょう。
これは、随分とユーザ寄りの契約ですが、そもそもの請負開発というものの特徴を考えれば、そうおかしな話でもありません。場合によっては、ライセンス料の一部だけ支払うなど、多少の譲歩もできますので、これは十分に検討に値するやり方かと思います。
こうした方法に併せて、ユーザからはパッケージソフト等の選定を指定せず、全てSIベンダの責任で提案、開発してもらうということも有効でしょう。
とにかく要件だけを伝えて、どんなパッケージソフトを使うのかは、SIベンダの責任で選択し、カスタマイズ費用も予測で提案してもらう。実際に作って見て、その費用が上振れしたり、下に振れたりしても、そこは恨みっこなしというものです。
つまり、パッケージソフトが使えるか使えないか、費用が予定通りか膨らむか、その辺りのリスクはSIベンダが負うことです。当然、そうなるとSIベンダは、リスクを見て多少高い見積を出してくると思いますが、それは保険として呑むしかありません。
もちろん、ユーザ側もその見積が妥当かどうか有識者を入れるなどして真剣に精査する必要はあります。しかし、そこで高めに積んでいるなと思っても、後になって言われるよりは、と受け入れやすくなるのも確かです。
もっともこうしたやり方はSIベンダ側に調査コストや、上振れした開発工数に対応する体力が必要です。また、ユーザがSIベンダにとって、「赤字を覚悟してでもつきあいたい相手」である必要がありますが、もし可能であるなら、ユーザにとって安全な方法と言えます。