SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

直近開催のイベントはこちら!

EnterpriseZine編集部ではイベントを随時開催しております

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

紛争事例に学ぶ、ITユーザの心得

出来上がらなかったシステムに利用した、ソフトウェアのライセンス料は払うべき?

契約がシステム開発全体を債務とは捉えられない

 随分と、ユーザ企業には酷な判決となってしまいました。まず契約が成立していないのだから、SIベンダ側にシステム全体を完成させる債務はないとしています。となると、ユーザ企業側にもお金を払う言われはないとなりそうなところですが、この判決はそこを区別しています。

 まず、ソフトウェアのライセンス料については、SIベンダが仕入れて、ユーザも合意の下、納めている、つまり普通の買い物と捉えることができるので、その代金は支払うべきとしています。

 また、要件定義費用についてですが、これは他の判決を見ても、支払いを命じることが多いように思えます。例え契約がなくても、商法512条を法源として、顧客のために働いた分は費用として請求できるという判例もありますし、また、要件定義書は、それ自体がユーザの役に立つものである (例えば、この要件定義書を他のSIベンダに見せれば、それを元にシステム開発ができる)から、その分の費用は払うべきという判例もあります。

 ユーザから見ると、本当に業務に使えるかどうか分からないソフトウェアに1,000万円を超えるような費用を払うのはリスクである反面、使ってみなければ使えるかどうかも分からないという、袋小路に追い込まれたような状態になってしまうわけです。

 ユーザとしては、使えもしないシステムに数千万円のお金を払うと言う結果になってしまったわけですが、他の判決と比較しても、理屈の通った判決ではあります。

次のページ
SIベンダにリスクを持ってもらう方法もある

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
紛争事例に学ぶ、ITユーザの心得連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/12686 2020/01/22 08:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング