ビジネスがIT化していくからこそ、新天地で自らを役立てたい
福田康隆(以下、康隆氏):実は、ちょっと緊張しています。今回の対談相手である福田譲さんとは、プライベートで以前からお付き合いはありますが、こうした場で仕事の話をするのは初めてだからです。
福田譲(以下、譲氏):言われてみると、確かにそうですね。康隆さんに呼ばれたから来ちゃいましたけど。今回はどういうテーマでしたっけ?
押久保剛:統括編集長の押久保と申します。福田康隆さんは弊社『THE MODEL』の著者でもいらっしゃるのですが、そのご縁で日本やグローバルのDXを考える対談シリーズを展開したいと思い、今回がその初回となります。
譲氏:康隆さんの人気がまた出ちゃうやつですね(笑)。
康隆氏:いえいえ、とんでもないです。以前、私は取材記事でこれからの日本企業がDXも含めて変わっていくためには外部人材の登用が重要になるという話をしたのですが、福田譲さんはまさにそれを体現されているほうで、最初にお話しをお聞きしたかったのです。
譲さんは新卒で入社後、外資系IT企業としては異例の生え抜きで社長に抜擢されたSAPから、2020年に富士通へ入社されました。転身に驚く人も多かったと思いますが、外資系から日本企業、そしてCIO兼CDXO補佐という役割に転じる意志決定をした背景を教えてもらえますか?
譲氏:周囲からは確かに驚いたという声を多数いただきました。でも、私からすると自然の流れでした。私が新入社員として入社してから23年で、SAPの規模は約10倍になりました。当初はドイツ企業然としたSAPでしたが、その過程でグローバル企業へと変わっていったのです。
新入社員で入社した時、私は英語もまともに話せず、目的意識もあまりなく入ってしまいましたが、ERP導入は企業にとってコスト的には重い。必ず経営会議に上がるものです。これを決定するということは、企業内推進者はキャリアをかけているといっても過言ではありません。
それだけの商材を取り扱うのがSAPですから、会社を変えようという気概を持った方々とたくさんお会いできたのは財産ですね。中にはまったく課題感をもっていない方もいましたが、それ以上にすごいと思う方々にお会いできました。
康隆氏:どのあたりをすごいと思ったのでしょうか?
譲氏:たとえば、あと2年で定年という役員の方が、10年後の自社を考えて、ルールを変えていこうとするんです。単に変えようとリーダーシップをとるだけではありません。日本企業は総論賛成、各論反対の傾向が強いのですが、この各論反対が起きた時に粘り強く調整をし、ゴールに導いていく姿には感動します。私たち外部パートナーも、そういった方を支えなくてはと自然と思いますよ。もちろん、「社長はこう言っているけれど、僕は無理だと思うんですよね」という方も多いですけどね。
そんな中、SAPで日本法人の社長として約6年が経ったころ、富士通からお誘いをいただきました。タイミングです。SAPがドイツ企業からグローバル企業へ変わっていく様子を経験した自分が、日本企業でお役に立てることがあるのではないか? と思い始めた矢先でした。
康隆氏:海外企業と日本企業の差はどこにあるとお考えですか?
譲氏:戦略的活用に尽きます。日本はITを経営や業務を支える手段としてしか捉えていない。しかし、今は違うのです。ビジネスそのものがIT化していく時代です。この考えをもって経営をするかしないかは、実に大きな違いです。