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VMware環境の運用管理はクラウドベンダーに任せるべきか、自社コントロールとすべきか

edited by DB Online   2020/08/27 08:00

Oracle Cloud VMware Solutionはプライベートクラウド全体のクラウド化がターゲット

 後発となったOracleのアプローチは、他社とは少し異なる。他社がフルマネージドのサービスを提供し、VMwareのインフラ部分の運用管理は基本的にクラウドベンダーに任せてもらう形にしているのに対し、Oracle Cloud VMware Solutionではあえてフルマネージドサービスにしていない。

 既存のオンプレミス環境にほとんど手を加えずに移行できるVMware環境を用意するだけでなく、運用管理を顧客側でコントロールできるようにすることで、オンプレミスの顧客の運用管理プロセスもそのまま、パブリッククラウドに持ち込めるようにしたのだ。つまりVMwareインフラへのパッチあてや更新などの作業も、顧客が望むタイミングで実施できる。

 各社がVMwareとしっかり協業した形でサービスを用意しているので、どのパブリッククラウドを選んでもオンプレミスのVMware環境のクラウド移行自体はそれほど苦労しないだろう。とはいえ、バックアップの仕組みなど非機能要件も含めての移行となると、クラウド上のVMwareサービスだけでオンプレミスと全く同じ運用ができるとは限らない。

 非機能要件まで含めての移行となれば、たとえばIBM Cloudのベアメタルサーバーベースのサービスなど、顧客独自の運用管理構成ができる環境も必要となる。その上でフルマネージド型ではなく、ユーザー側で運用管理をコントロールできる自由度もいる。

 Oracleでは、VMwareで実現している比較的大規模なプライベートクラウドを、そのままOracle Cloudに移行できるサービスとしてOracle Cloud VMware Solutionを用意した。そのためコンピュート・インスタンスは3ノード、156コアが最小構成となっており、比較的大きな規模からの利用となる。つまり最初からプライベートクラウド全体をクラウドにリフトする用途となり、オンプレミス環境の一部を取り出し数10コアの環境を試しにクラウドで運用する用途には対応しない。

 またOracle Cloud VMware Solutionでは、同社の主力製品であるOracle Databaseを動かすこともあまり想定していない。Oracle DatabaseをOracle Cloudで動かすならば、Oracle Autonomous Databaseを使ってもらうのが同社の基本方針だからだ。Oracle Databaseはクラウド上のVMwareの上で動かすよりも、運用管理の手間がなくチューニングも必要ないAutonomousで利用しもらってこそメリットを発揮できる、と言うのがOracleの主張なのだ。

 OracleではVMwareやHyper-Vなどは「Soft Partitioning」と分類され、Oracle製品がインストールされる物理サーバーに搭載される全ての物理プロセッサがライセンスカウントの対象となる。そのため全てをOracle Databaseで利用していなくても、多くのコアを持つ仮想化サーバーでOracle Databaseを動かしてしまうと、かなり高額なライセンス費用が発生するケースがある。

 それを回避するため、アプリケーションの稼働環境はVMwareベースのプライベートクラウドで動かし、データベース・サーバーは専用のVMwareクラスターか物理サーバーで運用する例もある。こういった運用をしていれば、データベースはOracle Autonomous Databaseへ、アプリケーションのプライベートクラウドはOracle Cloud VMware Solutionへとの移行は現実的だろう。

 またOracle Cloud VMware Solutionは、先日発表したOracle Dedicated Region Cloud@Customerでも利用できる。大規模なクラウド環境を顧客側でコントロールしたいニーズが強ければ、Dedicated Region Cloud@Customerとの組み合わせも、1つの選択肢となるだろう。この場合も、VMware環境だけでなく、企業のIT環境全体のクラウド化を実現するものになる。

 VMware環境だけをクラウド化したければ、メガクラウドベンダーだけでなく国産クラウドベンダーからも安価なサービスが各種提供されており選択肢は多い。そういったサービスとは一線を画すのがOracle Cloud VMware Solutionであり、Oracle Autonomous DatabaseやSaaSなども組み合わせる将来シナリオを描く企業向けのサービスと言えそうだ。



著者プロフィール

  • 谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

    EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーター かつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリストとして、クラウド、データベース、ビッグデータ活用などをキーワードに、エンタープライズIT関連の取材、執筆を行っている。

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