SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

EnterpriseZine Day Special

2024年10月16日(火)オンライン開催

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

紛争事例に学ぶ、ITユーザの心得

「契約の目的」をクリアにしないことで陥る落とし穴


 今回のテーマはシステム開発における「契約の目的」の大切さです。契約の目的を記す際に抽象度の高い表現を用いてしまうことも多いと思いますが、それに大きな落とし穴があった事例を紹介します。

システム開発の要件は、組織・業務改善の目的と結びつく

 私は内閣官房や経済産業省でIT開発に関するガイドライン作成に携わっていますが、そんな検討の中でも、あるいは自著の中でも、よく強調するのが「契約の目的」の大切さです。

 システム開発において、定義される要件は組織の目的、業務改善の目的と結びついたものでなければなりません。そうでなければ、いくら素晴らしいシステムを開発したところで、それは単なる玩具になってしまいます。

 組織の目的や業務改善の目的をユーザとベンダが共有し、本当に役に立つものを作ろうという思いを一つにすること。それを正式な書面として双方が一定の責任を負うことを約束するのが、契約書に記される「契約の目的」というわけです。

 実際、ITに関する裁判の例などを見ても、ベンダが約束した仕事を果たしたかどうかの判断を、この「契約の目的」に照らして下す例は少なくありません。逆に言えば契約の目的に適うものを作っていれば、詳細な要件が実現されなかったとしても「システムの目的は達成した」と見なされる例が多いのです。無論、システム開発において要件は重視されるべきものですが、契約の目的の重要性はそれを上回ると言っても良いでしょう。

 今回ご紹介するのも、そんな「契約の目的」が問題となった事件の例です。この事件の場合、ユーザはシステム開発に関してある程度ハッキリした目的をもっており、それを「開発の目標」として提示しています。

 しかし結局のところ、その目標の一部が達成される見込みがないことから契約を解除したところ、ベンダ側から費用の支払いを求められて裁判となりました。契約の目的について合意しており、それに連なる要件が実現されないことは確かだったようですが、それでも費用の請求がなされる。問題の一つは契約の目的、ここでは開発目標の表し方だったようですが、どのような結果になったのでしょうか。

 事件の概要からご覧ください。

次のページ
開発目標を達成できなかったソフトウェア開発

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
紛争事例に学ぶ、ITユーザの心得連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/13361 2020/09/10 11:59

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング