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「契約の目的」をクリアにしないことで陥る落とし穴

edited by DB Online   2020/09/04 08:00

 今回のテーマはシステム開発における「契約の目的」の大切さです。契約の目的を記す際に抽象度の高い表現を用いてしまうことも多いと思いますが、それに大きな落とし穴があった事例を紹介します。

システム開発の要件は、組織・業務改善の目的と結びつく

 私は内閣官房や経済産業省でIT開発に関するガイドライン作成に携わっていますが、そんな検討の中でも、あるいは自著の中でも、よく強調するのが「契約の目的」の大切さです。

 システム開発において、定義される要件は組織の目的、業務改善の目的と結びついたものでなければなりません。そうでなければ、いくら素晴らしいシステムを開発したところで、それは単なる玩具になってしまいます。

 組織の目的や業務改善の目的をユーザとベンダが共有し、本当に役に立つものを作ろうという思いを一つにすること。それを正式な書面として双方が一定の責任を負うことを約束するのが、契約書に記される「契約の目的」というわけです。

 実際、ITに関する裁判の例などを見ても、ベンダが約束した仕事を果たしたかどうかの判断を、この「契約の目的」に照らして下す例は少なくありません。逆に言えば契約の目的に適うものを作っていれば、詳細な要件が実現されなかったとしても「システムの目的は達成した」と見なされる例が多いのです。無論、システム開発において要件は重視されるべきものですが、契約の目的の重要性はそれを上回ると言っても良いでしょう。

 今回ご紹介するのも、そんな「契約の目的」が問題となった事件の例です。この事件の場合、ユーザはシステム開発に関してある程度ハッキリした目的をもっており、それを「開発の目標」として提示しています。

 しかし結局のところ、その目標の一部が達成される見込みがないことから契約を解除したところ、ベンダ側から費用の支払いを求められて裁判となりました。契約の目的について合意しており、それに連なる要件が実現されないことは確かだったようですが、それでも費用の請求がなされる。問題の一つは契約の目的、ここでは開発目標の表し方だったようですが、どのような結果になったのでしょうか。

 事件の概要からご覧ください。


著者プロフィール

  • 細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

    ITプロセスコンサルタント 東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員 1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より2012年まで日本アイ・ビー・エム株式会社にてシステム開発・運用の品質向上を中心にITベンダ及びITユーザ企業に対するプロセス改善コンサルティング業務を行なう。現在は、東京地方裁判所でIT開発に係わる法的紛争の解決を支援する傍ら、それらに関する著述も行なっている。 おもな著書に、『なぜ、システム開発は必ずモメるのか? 49のトラブルから学ぶプロジェクト管理術』 日本実業出版社、『IT専門調停委員」が教える モメないプロジェクト管理77の鉄則』。

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