コロナ禍で、企業の多くは厳しいビジネス環境にある。とはいえ、クラウドベンダーの業績は概ね順調だ。Salesforce.comの2021年度第1四半期(2020年2月1日から4月30日)の業績は、売上が前年比30%増の48億7,000万ドルとなっている。またAmazon Web Servicesの2020年6月末締め第2四半期の売上高は、前年同期比29%増の108億1,000万ドルだ。Microsoftの2020年6月期のクラウド関連事業の売上高も、通期で初めて500億ドルを超えた。そして、IBMの売上も盛り返した。
IBM Cloudもアーキテクチャを刷新してGen2に

IBMも、2020年3月までの第1四半期はクラウド事業の総収益は19%増だったが、第2四半期はクラウド収入の合計が前年同期比30%増の63億ドルと盛り返している。IBMがクラウドに取り組み始めたのは、2011年だ。2013年には、2005年創業のSoftLayerを買収し、IaaS系サービスを一気に拡大。2016年には開発者向けPaaSとして2011年から提供してきたBlueMixとIaaSを、「Bluemix」ブランドに統合した。2017年にはWatsonのAI技術を合わせ「IBM Cloud」となり、さらに2019年にRed Hatを買収しOpenShiftテクノロジーを本格的に取り込んでいる。

IBMでは、2011年当初をゼロ世代のクラウドと位置づけている。後にSoftLayerの技術を加えその上にPaaSのさまざまなサービスを統合したものを、第1世代としている。2019年の第1四半期頃からAIXやIBMi(旧AS400)、さらにはzシリーズなどIBM独自のIaaSを加えており、さらに現状のOpenShift技術を活用するハイブリッドあるいはマルチなクラウドを目指したものを第2世代(Gen2)と位置づけている。
IBMのGen2クラウドは「これまでのアーキテクチャを刷新しています」と、日本IBM IBM Cloud Platform事業部 事業部長 理事の田口光一氏は言う。そしてGen2となったIBM Cloudには、「Enterprise Grade」「Secure & Compliant」「Cloud Services Anywhere」という3つの強みがあると主張する。

Enterprise Gradeは、企業が利用している主要なアプリケーションのワークロード全てが稼動でき、既存の環境からの移行を支援するクラウドであることだ。現状までに企業のITシステムの20%程しかクラウド化されておらず、残り80%のクラウド化はこれからが本番だ。これまでクラウド化がなかなか進まなかったのは、ミッションクリティカルシステムを動かす機能、性能が従来のクラウドサービスでは十分でなかったことに加え、厳しい規制などにより簡単にはクラウドに移行できなかった状況もある。
IBMとしてはEnterprise Gradeの高い信頼性、可用性のあるインフラを用意し、その上でSecure & Compliantの特長でもある業界最高水準のセキュリティ機能を提供してミッションクリティカルなシステムのクラウド化を推進することとなる。その上でCloud Services Anywhereで、エッジも他のクラウドサービスも含め、OpenShiftを使ったオープン技術で分散クラウドを実現すると田口氏は言う。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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