Appier社では、報道関係者向けに「AIが変革する経験―新型コロナ禍の中で考える次世代の経験経済」と題する説明会を実施しました。
過去半年近く、ディープフェイクを含む最先端のAI研究や世界的なスポーツイベントで活用されるであろうAI技術など、AIサイエンティストの視点からAIの研究や実装に関して説明してきました。その後新型コロナウイルスが流行したことで、経済活動、教育、文化など、あらゆる面で影響や変化が起きました。人々のテクノロジーの利用や接触方法、ITと共存することで生まれる新しい経験によって、なにが変わったのか、あるいは変わっていくのか。今回AIの領域における変化を説明します。
経験経済とは何か
今回のメインテーマである「経験経済」は、1998年にジョセフパイン2世氏とジェームズ・H・ギルモア氏によって執筆され、ビジネスやマーケティングの新しい概念として広がりました。
ここで両氏は、経験経済の定義を「企業は顧客が印象・記憶に残る経験を提供するべきであり、その記憶自体が製品になる」と説明しています。
商品やサービスを提供すること自体は価値を持たなくなり、それらに関係する「経験」こそが今後の経済において重要な要素になると予測したのです。
われわれの社会は、農業中心の経済からから、産業経済へ、そしてサービス経済へと変化してきました。経験経済はそれをさらに進め、経験があたらしい価値を生むことを示しました。
テクノロジーと共に経験が進化する
経験経済は、テクノロジーの発展によってどのように進化したでしょうか?
インターネットやモバイル端末は人々の生活にとって不可欠なものになりました。この二つを例にとって、テクノロジーが新たな経験を創出するか、そして経験を測定する方法はあるのかを考えてみましょう。
インターネットがあれば、場所や時間の制限なくオンラインで映画や動画を視聴することが可能です。動画配信サービス会社では、提供する動画の視聴された時間や頻度などを細かく測定することで、視聴者それぞれが観たいと思う動画を提供し、よい経験を持てる率を高めることができます。
モバイル端末はどうでしょう。こちらもインターネットと同様に消費者にいつでもどこでも情報にアクセスすることを可能にしています。携帯事業者やアプリ事業者は、端末に搭載されているGPS、デバイス上で何をしているか(画像や音声の利用)などの動作を測定することで、より利用者の体験を改善し、利便性を高める努力をするでしょう。
テクノロジーとともに経験が進化していく状況をAIを使ったデジタルマーケティングの事例を説明します。AIはさまざまなデータを活用することで、適切なユーザーに対して、適切なタイミングに適切なチャネルを通じて、最適な経験を実現することができます。
カスタマージャーニーに沿って説明すると、ある消費者がPCで商品を検索します。その人のオンライン上の行動をAIが分析し、購入意欲があることがわかると、割引クーポンを提示して、購入を促します。その人が商品をカートに入れたものの、支払い手続きをしていない場合、AIがそれを感知して、特典を提示します。無事買い物が完了したのち、今後も継続して購入してもらえるようにいくつかの特典を提示するなど、消費者の趣味・関心を把握して、より良い経験を提示できます。
次に、AIの第4のトレンドといわれている知覚AI(認知AI)について説明します。知覚AIとは言語、音声、画像などの情報をコンピュータが認識し測定します。
言語や音声に認知AIを適用した例として、スマートデバイスとの対話が挙げられます。AIは音声や言葉遣いに基づき、人の関心や感情の起伏を測定することができるようになりました。
また、AIが人のオンラインとオフラインの顔を識別したり、表情や視線の動きなどを通じて感情を測定できます。日常生活のさまざまな経験とテクノロジーの関係が見えてくるのではないでしょうか?