「無印良品」ブランドでおなじみの良品計画。いまや海外15カ国にも展開するなど、好調な事業を支えるのが、“ユニケージ開発”と呼ばれる独特の開発手法だ。Linux標準装備のシェルスクリプトの他は、開発言語やデータベースなどを一切利用せず、1~2週間というきわめて短い開発期間で、次々にシステムをリリースしていく。
ユニケージ開発採用の背景には、同社のITシステムに対する考え方や、ベンダーとの付き合い方についてのポリシーが色濃く反映されている。同社執行役員・情報システム担当部長の小森孝氏(5月27日付で同社取締役に就任予定)に話を聞いた。
2001年の赤字転落ですべてが変わった
――早速ですが、創業以来、現在のような形でシステムを内製されていたのですか?
いいえ、以前は違いました。当社は創業してから業務要件は自社で行い、開発から運用まではベンダー4社にお任せするという体制で10数年来やってきました。業務も理解していただいておりましたし、関係は悪くなかったですね。
――それが何故、今のような形に変わったのでしょうか?
結論から言えば、経営危機がきっかけです。私達は、2000年ごろに大きな経営の転換期を迎えました。具体的に言えば、競争激化による売上の減少です。衣類ではユニクロさん、雑貨ではダイソーさんなど低価格を武器にした強力なコンペティターが登場し、2001年には赤字に転落しました。会社がなくなるという危機感があって、しまむらの藤原秀次郎氏など優れた経営者を社外取締役に招くなど経営改革のための施策を行いました。
社内改革から取り残されるシステム部門
システムに対する問題意識が生まれたのはこの頃です。当時、全社で色々な業務プロセスの改革が行われましたが、システムはほとんど対応できなかった。根本的な構造の問題です。店舗系、物流系など、縦割りで開発を委託していたのですが、改善のテーマは全社横断的であることが多い。すると、改革に合わせてシステムを変えることがとても難しい。そんなことからシステムについて課題がどっと出てきました。
2001年から経営改革が始まっていたのですが、システム部門はなかなか体制的にも変わることができずにいました。しかし、2005年ごろになると、老朽化も進んで待ったなし。バッチ処理が終わらなくて朝システムを開けられない、保守も切れてしまっているなどの問題もあって、変えたい、変えなきゃいけないという機運が高まっていった。
結局、コストの問題などもあって、経営層が決断を下しました。「システム的なリスクがあっても良い。とにかく変えて、コストを削減し、3年後に姿が変わればいい」ということで、私にシステム部門の改革を命じたのです。