TBMはCIOの武器となり、IT部門と利用部門をつなぎ、経営に寄与する
押久保剛(以下、押久保):Apptio代表の成塚歩さんの連載がはじまります。そこで、今回はその目的について対談形式で話したい思います。本連載では、企業のIT部門の課題を解決する「TBM(Technology Business Management)」というメソドロジーの理解・浸透を目的としておりますが、まず現状でIT部門がどういった課題を抱えがちなのかを、共有できればと思います。
成塚歩氏(以下、成塚氏):ありがとうございます。私はマイクロソフトを経て「TBM」の提唱メンバーでもあるApptioへジョインしました。マイクロソフト時代は企業のCIOにお会いする日々でしたが、なんて大変なお仕事なのかと感じていました。何かトラブルが起きた場合、その全責任がCIOにかかります。
企業の根幹がIT化するにつれて、その責任の所在は広範囲にわたるのにもかかわらず、デジタル化の加速化で攻めにも転じなくてはいけない。攻めも守りも同時に行い、かつその視点は企業の全体を見渡さなくてはならないのです。
押久保:CIOの目線だと確かにそうなりますよね。でも、利用部門や他の経営層はそう思わないのでは? 利用部門側から見ると「IT部門は高いし遅い」という声も出てくるのではないでしょうか?
成塚氏:おっしゃる通りです。しかしそれにはそれなりの理由があるのですが、IT部門と利用部門の間に、もっといえばCIOと他の経営層の間に共通の言語がないのですよね。
押久保:よく利用部門のほうがいう「IT部門が何をいっているのかわからない」
成塚氏:そうなんです。結果何が起きているかというと、利用部門はわかりやすいスタートアップのサービスやソリューションを、利用部門だけで契約したりすることが発生していきます。
押久保:スタートアップのサービスやソリューションは単機能なものが多く、利用部門でも自社の課題の解決に使えるのではないかと理解しやすい側面もありますしね。
成塚氏:はい、それが悪いというわけではなく、こうした利用部門による独自のIT導入はシャドーITと呼ばれますが、IT部門が気づけない。それによる、無駄が発生してしまう。
押久保:つまりIT部門と利用部門の関係がうまくいかなくなると、経営全体における効率化や最適化にも問題が生じてくる。
成塚氏:そうです。しかしこれは仕方がないことで、ITがもはやビジネス全体を覆うようになっている今、IT部門は会社全体から無限のリクエストを受け続けなくてはいけなくなる。そしてそのIT部門のリソースは当然ですが有限です。こうした課題は日本に限らず万国共通で、この課題を解決するために2007年に米国で「TBM」の概念が生まれました。