ユーザー部門への提供価値を改善していく4つの方法
前々回と前回にてTBM(Technology Business Management)フレームワークに定義されている、IT部門が推進していくべき4つの規律として、Creating Transparency(可視化)、Plan and Govern(IT予算策定とIT予算管理)、Deliver Value for Money(コストの低減とコスト妥当性の説明)、Shape Business Demand(ユーザー部門との関係性改善)について紹介しました。
今回はTBMタクソノミーを使ってITリソースやアプリケーションTCO、ITサービスの利用状況について可視化をした後に、IT部門が提供する価値をどのように改善していくかについて紹介します。「ユーザー部門との4種類の会話」としておりますが、ユーザー部門への提供価値を改善していく方法として4つあるとご理解下さい。
TBMフレームワークではIT部門は大きく2つの改善領域を定義しています。ひとつはRun-the-Business(既存システム運用)、もうひとつはChange-the-Business(新規システム開発)の領域になります。
Run-the-Businessの領域ではポートフォリオによる管理とCost for Performanceによる管理という2つの方法を用いて改善を行ないます。Change-the-Businessの領域ではInvestment in InnovationとEnterprise Agilityという2つの管理方法を用います。今回は特にRun-the-Businessの領域における価値訴求に関して説明します。
Run-the-Businessの領域に対してですが、TBMでは既存システム運用の改善という課題に対し、サービスイン後のアプリケーションやITサービスにアプローチするだけでなく、プロジェクト起案の段階から改善を行なうアプローチもとります。
多くの組織において、システム投資のプロジェクトが起案される際、そのプロジェクトから開発されるアプリケーションやITサービスが生み出すビジネスパフォーマンスとプロジェクトにかかるコスト(CapEx/キャペックス)を比較して稟議され、プロジェクトが承認された後は、プロジェクト進捗のみについて管理がなされます。
この管理軸でのプロセスが続くと、新規プロジェクトで新しいハードウェアが購入された場合、そこから発生する減価償却費や長期サポートなどの長期にわたる固定費(OpEx/オペックス)について管理をすることができません。
そして新規プロジェクトが起案・承認されるたびにIT部門は運用費の増加に見舞われ、巨額の運用費がIT予算を圧迫することになります。結果的にイノベーションに投資が回せなくなり、「うちのIT部門はイノベーションに興味がない」などというユーザー部門からの評価につながります。
あるいは、そのような状況下でイノベーションに対する評価を下げないように、本来投資をすべき領域、たとえばアクティブディレクトリなどのIT4IT[※1]や、予定されている運用に必要なIT資産への投資資金をイノベーションへ回すことで運用リスクを高めてしまったり、エンドユーザーの満足度を下げてしまったりし、結果的にIT部門の評価を下げてしまいます。
このような状態を避けるべく、TBMではプロジェクト起案段階とサービスイン後の双方のタイムラインに対し、CapExだけでなくOpExも含めた総支出をコストとみなし、ビジネスパフォーマンスとコストに加え、利用率の3つをトレードオフとした管理を行ないます。