TBMとは何か
TBMは「継続的なビジネスインパクトをもたらす事業経営のために、テクノロジーの経営資源(ヒト・モノ・カネ)と投資ニーズを統合的にマネジメントし、IT価値最大化を実践するベストプラクティス」と定義をしております。この定義にもあるように、IT部門を一つの経営主体と捉え、経営メソドロジーとしてIT部門をマネジメントする方々に向けたものとなります。
「TBMとは何か」をわかりやすく捉えていただくために、他の業界や領域で類似した事例を用いて説明をします。1970年代と80年代に製造業が初めてテクノロジーを利用し、素材メーカーから小売までのサプライチェーン全体のデータ可視化を行ない、需要サイドと供給サイドの密な連携を実現しました。
これにより、サプライチェーンの中での在庫の最適化、製品のスリム化、利ザヤの改善などを実現いたしました。この中でMRP(Manufacturing Resource Planning)という生産管理手法が生まれ、このMRPを起源として、会計や人事等の業務管理機能が追加され現在のERP(Enterprise Resource Planning)へと派生しました。
もう1つ例をあげると、デジタルマーケティングの領域において、ホームページなどから受ける問い合わせから商談の成立に至るまでのプロセスがあります。この一連のプロセスに対してテクノロジーを活用し、そこを流れるデータの可視化を行なうことで、各プロセス間の連携を密に行なうことができるようになりました。これにより、顧客獲得に必要となる費用や、そのためのマーケティング予算の把握を正確に行なうことが可能になりました。この中でMA(Marketing Automation)という分野が生まれました。
TBMは先に挙げた例と同じように、テクノロジーを活用しながらデータの可視化を行ない、一連のプロセス間の連携を密に取ることで、サプライチェーン全体を最適化することが基本的な考えとなりますが、その適用領域は企業内ITサービスの一連のプロセスになります。
企業にはIT部門が持つITリソースからプロジェクトを組成し、そのプロジェクトからアプリケーションやITサービスが作られ、そのアプリケーションやITサービスをユーザー部門が利用するというサプライチェーンが存在します。
TBMはこの一連のプロセスに対して、データの可視化を通じて各プロセス間の連携を密に行なうことで、継続的なITリソースの適切な調整、アプリケーションポートフォリオ合理化、ポートフォリオ管理によるIT投資予算の最適化、などを実現するものになります。
またTBMにより各プロセスのデータの可視化が行われることで、ユーザー部門やIT部門を取り巻くステークホルダーとの会話の質も変化します。
「IT部門のリソースはどれくらいあるか」
「どのくらいのリソースがアプリケーションに使われているか」
「そのアプリケーションはユーザー部門にどのくらい利用されているか」
「そのユーザー部門はどれくらい利益を出しているか」
会話の質を変化させると共に、IT部門とユーザー部門の関係にも変化をおこします。従来はIT部門が提供している価値についてユーザー部門へ説明することが難しく、またITコストの妥当性についても説明が難しかったために「すぐにNoというIT部門」「お金を使うIT部門」「ユーザー部門を理解していないIT部門」などIT部門はビジネスをバックアップする存在と認識されることが多かったのではないでしょうか。
一方、TBMによりユーザー部門との関係を改善し、ビジネスパートナーあるいはテクノロジー企業の場合はビジネスドライバーとしての立ち位置を目指します。こうしたビジネス視点に立脚し、企業全体に必要なIT投資の決定を支援します。