データを意思決定の材料に使う「データドリブン経営」を実践したい企業にとって、最大のチャレンジがデータ分析人材の育成であろう。専門組織を設置し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進める企業の参考になるのがヤマハ発動機の挑戦だ。その取り組みは「DX銘柄2020」選出という形でも評価されている。同社のリーダーにデータ分析スキルの民主化に関する詳細を訊いた。
2018年1月にDX専門組織を立ち上げ
――最初に大西様ご自身のことを聞かせていただけますか。
2008年新卒でヤマハ発動機に入社し、海外工場の生産企画や製造技術の仕事に従事してきました。2013年にMBA取得のため米国に留学したとき、伝統的な大企業の資産とスタートアップの良さを組み合わせて新しいことをしたいと考えるようになり、戻ってから新規事業企画やベンチャー投資の仕事をするようになりました。テクノロジーとビジネスの知識があって、ものづくりができることを買われてデジタル戦略部に来ました。部の中には3つのグループがあるのですが、現在はこのうちデジタルマーケティンググループとデータ分析グループのグループリーダーを兼務しています。

――デジタル戦略部はどんな役割を担う組織でしょうか。できた時期や背景について教えてください。
組織ができたのは2018年1月のことです。2019年から2021年までの中期経営計画が進行する中、デジタルテクノロジーの活用を進めていくことを方針の一つとして掲げています。計画立案時に当時の経営陣たちが、よりAIやIoTのような最新テクノロジーの組織的な活用を強化していかなくてはならないという認識を持ったことがきっかけで、2017年4月にフェローとして平野浩介氏(元インテル)を招聘し、体制を整備したのです。私自身は新規事業開発のチーム出身ですし、生産技術やITなどいろいろなチームから人を集めて最初は10人程度でスタートしました。部としては「ビジネスファースト」の考え方に基づき、「トップラインを伸ばす」「ボトムラインを改善する」の2つをミッションとしています。
――デジタル戦略部におけるデータ分析チームの役割はどんなものでしょうか。
このチームは、統計解析や機械学習のスキルを持つデータサイエンティスト、ダッシュボード設計やデータモデルへのシステムへの実装を行うデータエンジニアの集まりです。部のビジョンとは別にグループとして「データを当たり前に使いこなせる会社に変える」というビジョンを掲げていて、その実現のために2つのミッションを設定しています。1つは「事業部と一緒に現場の課題を解決する」ことです。先ほど紹介した「トップラインを伸ばす」あるいは「ボトムラインを改善する」ことに貢献するプロジェクトを進めています。もう1つが「全社のデータリテラシーの向上とデータ分析スキルを民主化すること」です。この2つが揃って初めて目指すべきビジョンが実現できると考えています。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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