発行ではなく、受領に着目
――最初にプロダクト開発の経緯から伺います。柴野様は監査法人を経て財務経理としてSansanに入社されたそうですが、いつから事業を立ち上げたのでしょうか。
企画自体は2年以上前から温めていたもので、経理を含めて様々な部署が関わる請求書業務の課題を解決したいと考えたことが背景にあります。プロトタイプの開発とテストを繰り返し、2020年5月に新しいプロダクトとして提供を開始しました。Bill One事業部として立ち上がったのは2020年12月のことで、それ以前は新規事業開発室の中で開発を進めてきました。
――2020年5月以降、導入はどのぐらい進んだのでしょうか。ターゲット市場をどのようにお考えですか。
現在の導入企業は大手から中小に至るまで規模も様々です。具体的な数字ではお答えできませんが、2022年5月末までに契約1000件以上の獲得を目指しています。ターゲットとして特に意識している規模や業種はありません。強いて言えば、取引先が多く請求書が多い会社に向いていると思います。例えば、規模が小さくても飲食業のように仕入先が多い業態では、都度発注で毎月の請求書が多く、大手と共通する課題を抱えています。月10枚程度であれば、さほど面倒ではないと思うかもしれませんが、紙でのやり取りが残っていると業務はより複雑になります。名刺と同じで大企業ほど悩みが深いと思っていましたが、月100枚程度でも便利さを実感しているとの声をいただき、中小企業の課題解決にもフィットすることもわかりました。
――そのBill Oneとはどんなサービスなのでしょうか。
Bill Oneは請求書を電子化するものですが、発行ではなく受領に特化したサービスであることが特徴です。受け口の集約と正確なデータ化の2つを重視して開発しました。紙でしか受け付けない企業が多いのは、紙で保管するのが当たり前だったからです。紙で受け取ることを前提に業務フローを作り込んでいるので、メールで送っても印刷し直す必要があり、受取側としては負担になります。発行側としては、電子化した請求書を送っても嫌がられるだけなので、紙で送るしかありませんでした。それがコロナ禍で事情は一変します。ハンコのための出社が問題視されたのは記憶に新しいところですが、請求書についても同じで、そのためだけに出社するのか、再考する企業が出てきました。