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IT部門でなくても出来る「欲しいシステム」の記述法

Marketo Master/Marketo Champion 谷風公一の集中講座【連載第4回】


 業務ドキュメントに必要な要素をまとめると以下になる。

  • どの部門のどの担当者が、
  • いつ、どれくらいの頻度・周期で、
  • 何をインプットに、
  • どんなことをして(手動でやるのか、ITにやらせるのか)
  • 何をアウトプットするのか

 特に、インプットとアウトプットを具体的に定義することが極めて重要である。生け簀の絵にあるように、顧客の状態を変化させていくことがマーケティング(と営業)の業務の本質である。どこからも辿り着けない、どこにも行き着かない業務があるとすれば、それは顧客の状態を何から何へ変えたのか把握する術がない、ということだ。それに「何をもとに、何を作るのか」が明確でなければ、担当者に勝手な想像や解釈を与えかねない。

 業務ドキュメントを作る、と聞いて、いわゆるフローチャート(スイムレーンチャートともいう)を想像する方がいるかもしれないが、必ずしも、それにこだわる必要はない。フローチャート形式は、業務が様々な部門を行き来したり条件分岐が多発したりするケースに有効な表現方法ではあるが、半面、作成や更新に時間がかかる。

部門をまたいだり分岐があったりする業務にはフローチャート形式がおすすめだが・・・
図表:4−2 部門をまたいだり分岐があったりする業務にはフローチャート形式がおすすめだが・・・

 ひとつの部門に閉じていたり、複数の部門にまたがっていたとしても行き来も分岐もないような「一直線」の業務であれば、フローチャートを作成する必要はない。マーケティングの業務は、生産部門や管理部門(経理や人事)のそれに比べれば、ずいぶんシンプルなはずだ。顧客の状態に応じた様々な業務、例えばキャンペーン実行やコンテンツ制作はあるが、それぞれの業務は一直線で、他の部門と複雑に絡まりあうことも条件分岐することもあまりないように思う。

 こういう「一直線の業務」を記述する場合は、「アクティビティ一覧」形式をお勧めする。アクティビティ一覧は、前述した「業務に必要な要素」を盛り込んだ、エクセル形式のフォーマットである。特徴は、大きく3階層で業務を整理しながら記述していくことである。フローチャート形式では、1枚のシートの中に業務プロセスを同じような粒度でプロットしていくが、アクティビティ一覧では「ざっくりこんな業務」から「詳しくはこの作業」まで一覧形式で記述していく。このため、「アクティビティ一覧」方式で業務を記述すれば、関係者間で全体感と個別具体性を行ったり来たりしながら確認でき、議論の粒度感を合わせやすい(「今、どのレベルの話をしてますか?」と聞きやすい)、という利点がある。

図表:4−3 弊社が2018年に作成した、マーケ&セールスの「アクティビティ一覧」のイメージ。階層構造で業務を記述し、インプットとアウトプットを明確に定義する。[クリックして拡大] フォーマットの完全版はこちら

 アクティビティ一覧を作成しているうちに、「生け簀の絵」に無い業務領域を発見した場合は、関係者で再度「生け簀の絵」を検証してみよう。会社の将来に正解はない。納得がゆくまで「生け簀の絵」とアクティビティ一覧を見比べながら、これで本当に顧客とのつながりを強めていけるのか、自分たちが望む将来像を実現できるのか、確認してみてほしい。

欲しい機能を全部洗い出せ

 アクティビティ一覧を完成させれば、いよいよ「マーケティング業務のデジタル化」の本丸、将来のITをドキュメント化するフェーズに入る。ここで主に実施するのは、機能要求の洗い出しである。ITに盛り込みたい全機能を洗い出すので、覚悟して進めてほしい。

 「機能要件なら聞いたことあるけど、機能『要求』って?」と思われる方もいるだろうが、要求と要件は別物だ。「要求」とは、発注者が「こうしたい」「こうありたい」と希望するもので、「要件」とは、ベンダーが発注者の希望を具体的な性能や機能(を記述したドキュメント)に落とし込むものである。例えば自動車を買う場合だと「家族4人でキャンプに行けるような車が欲しい」というのが要求、「それなら最低でもミニバンサイズが必要」「今のEVなら、ちょっとした電熱器具を夜通し使えるほどの電力供給が可能」というのが要件となる。家を建てる場合だと「キッチンは明るいほうがいい」のが要求、「だったらキッチンは2階がおすすめ」が要件となる。もちろん、これから作るのはITの機能要求なので、車や家と異なり、もっと「システムっぽい」表現になる。そうはいっても、基本的な考え方は「ユーザーとしてこういう機能を欲しい」なのだから、尻込みすることはない。「ITのことはよくわからないから」「情報システム部の人間ではないから」と言わず、将来、自分が使い倒したいシステムを妄想しながら、取り組んでほしい。

 ベンダーは要件を定義するプロだが、発注者のビジネスや商材を最初から分かっているわけではない。発注者からの要求がなければ、汎用的なやり方で仕事を進めるしかない。自動車の例で言えば、何の要求も出さないまま「自分にあった車を売れ」とディーラーに迫ってもどうにもならないし、迫られたディーラーも「とりあえず売れ筋の車をご用意しますね」になってしまうだろう。自家用車を買うならそれでいいかもしれないが、会社のカネで同じことをやってはいけない。要件定義のインプットとなる要求は、発注者がきちんと考えて、ベンダーに分かる言葉で伝えなければならない。「同業他社の導入事例を参考にすればよいのでは」という意見もある。確かに先達の拓いた道は参考にはなる。しかし「神は細部に宿る」という言葉のとおりで、実際にITを使う現場の業務を比較すれば、同じ会社はひとつとない。他社を参考にしているだけでは「わが社を将来に導くIT」は手に入らない。

 特に、マーケティング領域のツールは、そのほとんどがSaaS形式なので、顧客に合わせた個別開発ができない上に、導入期間は短いしベンダーのサポート体制も潤沢ではない。ベンダーとは週に一度ミーティングをするくらいで、実際に設定を担うのも発注者側だろう。導入を始める前に「私たちの要求」をきっちり言語化しておき、導入開始と同時にベンダーにぶつけなければ、本当に欲しいITを導入し切るのは難しい。

 百歩譲って、ハウスリストにメールを一斉配信するだけ、ちょっとしたランディングページを作るだけ、といったシンプルなツールなら、ことさらに要求を整理する必要はないかもしれない。しかし、顧客と長期間にわたってKeep in touchな関係を維持し続けたり、商談プロセスに踏み込んで顧客に商材の価値を訴求したりしたいのであれば(これらは、B2B商材であれば今や必要不可欠な要求であると思う)、自分たちのビジネスの特性を織り込んだ要求を洗い出そう。ベンダー丸投げでITを導入して、いざ使う段になって「こういうことができる、と営業から聞いていたから選んだのに、そもそも設定されていない」「用意された機能の1/10しか実は必要なかった」となるのは、あまりにお粗末である。

次のページ
失敗しない機能要求洗い出しのコツ

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谷風 公一(ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ)(タニカゼコウイチ)

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