第2回と第3回で、「デジタル化待ったなし」のマーケティング組織について、経営や他組織も巻き込んだ高品質な態勢の作り方、将来のざっくりした全体像の描き方をお伝えした。「これならやってみたい」と思えるコンセプトと、それを実現できる「部門の壁を超えたひとつの仕組み」を構想するには、関係者全員が「ぜひ盛り立てたい顧客」を言語化できる状態になっていなければならない。そして、これらを1枚の「生け簀の絵」に落とし込むところまでが、前回までの概要である。 今回は、より具体的な業務とITの将来像の作り方に入っていく。これらをうまく作ることができれば、第2回でお伝えした「マーケティング組織のヤバい度チェック」の「7. プロモーションを推進するために必要な業務、システムが定義され、関係者が理解・納得して運用している」「8. 業務、システムを関係者間で定期的に見直している」の足がかりとなる。 今回は、ITの将来像作りに役立つダウンロード資料を用意したので、ぜひ活用してほしい。(文末 ※1)
マーケティング業務にフローチャートはいらない
前回の連載で示した「生け簀の絵」には、顧客をある状態からある状態に移すために主管組織がなすべきことの大枠が描かれている。この大枠が、関係者が「これならやりたい」と思えるものになっていれば、これを核にして、業務とITの「あるべき姿」をドキュメントに落としていくことができる。業務とITの将来像を作る、と言ってもゼロから作っていくわけではない。
「デジタルマーケティングをやるならツールを導入すればいい。なぜ、このようなドキュメントを作らなければならないのか。回り道ではないか」という意見をいただくこともあるが、これらを作る理由が2つある。
1つめは、スーパープレイヤーに頼らない仕組みを企画面で実現するためには、きちんと「見える化」された業務とITが必須だからである。スーパープレイヤーであれば直感的にこなせてしまう業務やシステム操作であっても、凡人だとそうはいかない。また、担当者が変わっても素早くチームを安定稼働に持っていくためには、誰が読んでも理解可能な業務とITのドキュメントが必要となる。「いつでも作ることはできる」と後回しにせず、「部門の壁を超えたひとつの仕組み」を構想することで高まった関係者の熱量を、このタイミングで、一気に将来の業務とITに封じ込めてほしい。
2つめは、このプロセスを通らないと「関係者全員が納得できるツール選定」ができないからである。納得感のないツール選定は、そのツールを選んだ人たちにとっても、自分たちの会社にとっても、そして選ばれたツールのベンダーにとっても、不幸しか生まない。このことは次回の連載で詳しくお伝えすることにして、今回はひとまず「誰が読んでも理解可能な業務とITのドキュメントを作らなければ、ツール選定に失敗する確率が高まる」と了解いただきたい。
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