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富士通 柴崎辰彦の「一番わかりやすいDX講義」

富士通の「SEの変革」から始まった「デジタル変革」

【DXチャレンジ編】第2回


 富士通で初めてのデジタル部門の創設やサービス開発に取り組んで来た著者の実践に基づくDX連載の第一回。著者は、富士通 デジタルビジネス推進室エグゼクティブディレクターの柴崎辰彦氏。シリーズの第一部となる「DXチャレンジ編」では、「なぜデジタル変革なのか?」その勘所をデジタル推進部門やIT部門のみならず、経営者やリーダーも含めた企業の全社員に向けて実践経験を踏まえて紹介します。

デジタルビジネス時代の新たなサービスモデル

 これまで富士通をはじめ多くのITベンダーは、企業の情報システム部門に対して主に業務の効率化やコストダウンを目的にした受託型サービスモデルを展開してきました。しかし、企業ではICTの活用領域の拡大や本格的なデジタルビジネスの到来に向けて、このような「守りのIT投資」だけでなく、本業の強化に向けた「攻めのIT投資」に取り組む必要が出てきました。特に日本は米国と比較して後れていることは前回のこの連載でも指摘しました。

 企業の事業部門を中心とした本業を担う部門は、自社だけでなくその先にいる企業や場合によっては生活者との共創(Co-Creation)の取り組みが求められています。まさにオープン・イノベーションであり、そのサービス版とも言えるオープン・サービス・イノベーションは、デジタルビジネスの加速には必要不可欠な考え方です。筆者は長年情報処理学会などの学会で予てからその重要性を唱えてきました。

 米国では、IT技術者の多くはお客様企業に所属していると言われていますが、日本では、IT技術者の大半がITベンダーに所属しており、多くの日本企業の成長のために共創型サービスモデルでお客様のビジネス拡大を支援する必要があると言われて来ました。お客様企業でのIT人材の育成に加えて、しばらくは、ITベンダーの協力が欠かせないと言われる訳はこのような背景からです。我々もこのような新たな時代のニーズに対応する必要があると議論してきました。

図1.デジタルビジネス時代の新たな接点
図1.デジタルビジネス時代の新たな接点

「協業」と「共創」

 ビジネスの世界では、企業間の「協業」に加えて「共創」という概念が議論されるようになってきました。デジタルビジネスの1つの特徴でもあるオープン・イノベーション(或いはオープン・サービス・イノベーション)に欠かせない考え方です。

「協業」と「共創」は何が異なるのでしょうか?筆者がこれまで議論してきた中で、「協業」はお互いの利益を追求した価値の「Give & Take」のモデルであり、「共創」は参加するプレイヤーの各々の領域において新たな価値を生む「Create & Share」のモデルだと理解しています。

 「共創」は利益を越えた目標(共通善)を志向すると考えられます。これは、まさに日本に古くから伝わる近江商人の「三方よし」の考え方に近い考え方ではないでしょうか。欧米の概念が日本に紹介されるたびに学ぶことは多いのですが、実は古くから日本で語られてきた考え方が多いように感じます。

図2.「共創」は利益を越えた目標(共通善)を志向
図2.「共創」は利益を越えた目標(共通善)を志向

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この記事の著者

柴崎 辰彦(シバサキタツヒコ)

香川大学客員教授 富士通株式会社にてネットワーク、マーケティング、システムエンジニア、コンサル等、様々な部門にて“社線変更”を経験。富士通で初めてのデジタル部門の創設やサービス開発に取り組む。CRMビジネスの経験を踏まえ、サービスサイエンスの研究と検証を実践中。コミュニケーション創発サイト「あしたの...

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