EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

テーマ別に探す

前向きな逸脱のために、「外れ値」を愛そう。

edited by DB Online   2021/06/11 13:00

マイクロソフト SQL Server時代の逆発想

 「常識を疑え」――確かにハマるとよい結果を出します。私が、マイクロソフトでSQL Serverの製品マーケティング担当のときに、試したことがあります。通常、製品がでると次の製品まで、次の製品の話はギリギリまで伸ばし、今の製品を売ることに集中します。新しい製品のことを言うと、今の製品の販売を邪魔すると思います。これが一般的な常識で、B2Cの世界では事実だと思います。しかし、私がやったのは、SQL Server 6.5が出たその日から、次のメジャーバージョンであるSQL Server 7.0の話をガンガン市場に送り出し始めました。周りは“アホなことをしゃはる”と思っていたと思います。でも、結果は、周囲の予想とは異なるものでした。そんなよい製品が将来あるなら、今の製品を買っておこうという顧客が非常に多く、SQL Server 6.5の販売が好調でした。早い段階で次の製品のことを説明することで、安心感が作れたのです。B2Bの世界は、今、問題解決が必要で、買い控えというのはあまりなく、安心が何より大事なのだと学びました。

 このように、常識を疑うというか、通説とは真反対のことが少しでも実現の可能性があれば、その実行を検討するのが良いのかもしません。思いもよらない結果を得ることがあります。そのときは、万人に理解されないので、周りに惑わされない強い精神も、必要なのかもしれませんね。

前向きな逸脱

 個人ではなく、集団でも、常識を疑うやり方があると思います。最近、書籍『POSITIVE DEVIANCE(ポジティブデビアンス)―学習する組織に進化する問題解決アプローチ』を読み、感化されました。ポジティブデビアンスとは、前向きな逸脱のことです。集合や集団の中で、逸脱した成功例を見つけて、それを拡大していく問題解決のアプローチです。例えば、砂漠の環境なのに、緑が年々広がっているところがあり、調べてみると、それまでの常識では考えられなかった逸脱で植物を育成している人がいて、それを回りが真似て、緑が広がっていることが分かった。それを、別の地域にベストプラティスとして持ち込むことで、砂漠化の広がりという問題を解決できるというものです。なんか生物の進化のようです。

 なお、ポジティブな逸脱は内部からの学びで、外部から学ぶのはベストプラクティスだそうです。ただ、ベストプラクティスは、汗をかいて得たものではないので、なかなか根付かないようです。

 ポジティブな逸脱は、営業組織でよくあることではないでしょうか。営業の世界では、よく難しい新しい製品を売れと指示が下りてくることがありますが、全員が最初から売れるわけでありません。しかし、何名かの営業は、今までとは違ったターゲット層にアプローチするなど創意工夫して売ります。そこから組織が学んで、全体の販売を拡大していきます。それでも、落ちこぼれはいるものですが。

 その書籍にも記載がありましたが、通常の常識は統計でいうと正規分布の中央あたりということになり、それから外れた外れ値は邪魔者扱いされます。外れ値とは、統計学において、他の値から大きく外れた値のこと。測定ミス・記録ミス等に起因する異常値とは概念的には異なるが、実用上は区別できないことです。落ちこぼれではないようです。しかし、ポジティブな逸脱では、「外れ値」を積極的にみて活用します。「外れ値」を愛しましょう。



関連リンク

著者プロフィール

  • 北川裕康(キタガワヒロヤス)

    クラウドERPベンダーのインフォア(Infor)のマーケティング本部長。33年以上にわたりB2BのITビジネスにかかわり、マイクロソフト、シスコシステムズ、SAS Institute、Workdayなどのグローバル企業で、マーケティング、戦略&オペレーションを担当。その以前は富士通とDECでソフトウェア技術者。マーケティング、テクノロジー、ビジネス戦略、人材育成に興味をもち、日々格闘中。

バックナンバー

連載:北川裕康のエンタープライズIT意見帳

もっと読む

All contents copyright © 2007-2021 Shoeisha Co., Ltd. All rights reserved. ver.1.5